表題番号:2012B-199 日付:2013/04/12
研究課題保温保冷材下における外面腐食の検査箇所選択支援システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 立野 繁之
研究成果概要
現在、石油化学プラントにおける保温保冷材下の配管外面腐食は重大な問題となっている。配管の外面腐食箇所の推定方法としては、今までに発生した過去の腐食事例をデータベースとして利用し、腐食の発生要因である離散的条件(配管方向、湿潤環境の有無等)と連続的条件(温度、設置高さ等ど)から減肉速度を推定する方法が幾つか提案されている。

しかし、従来のニューラルネットワークを用いた手法では、学習データの網羅性に問題があり理論値を超える推定を行うことがあった。また近傍探索より加重平均を求める手法(近傍探索法)では、減肉速度の精度や腐食検査ポイントの的中率が低く、また推定値の範囲が広くなってしまうといった欠点があった。そこで、連続的腐食条件である運転温度、設置高さ、管径を従来の連続値から多段階の離散値へと変換し、同一の区分内でのみ加重平均を取ることにより腐食条件の合致の有無を判断する「区分探索手法」が提案された。さらにこの区分探索によって減肉速度の推算および腐食検査箇所の選定を行う方法が提案された。

本研究では区分探索手法を基本手法とし、各プラントから集められた腐食事例データベースを類似の特徴を持つ幾つかのサブデータベースへ分割し、推定箇所の環境因子に最も類似しているサブデータベースのみを使って腐食箇所を推算する手法を新に提案した。

腐食事例データベースの分類にはSOM(Self-Organizing Maps)を使用し、従来のデータベースをほぼ同サイズの9種類のサブデータベースに分類した。SOMで分割したサブデータベースを使用することにより、従来法よりも減肉速度の推定値のばらつきを抑えることが可能となり、同等の信頼度で比較した場合推定可能率を15%程度向上させることができ、推算精度も10%程度向上させることができた。これらの結果より、異なるプラント間のデータベースを混用しさらに再分割できることが示され、より広い範囲での腐食条件を元にしたデータベースを有効に使用して減肉速度の推算を行うことが可能となった。