表題番号:2012B-192 日付:2013/04/02
研究課題システムオンシリコンにおけるランタイム解析・最適化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 木村 晋二
研究成果概要
システムオンシリコンにおけるランタイム解析・最適化に関する研究というテーマで、細粒度の動的なクロックゲーティングとパワーゲーティング、Single Event Upset (SEU) エラーに対するFPGA上での回路の動的書き換えを用いた対処手法、メモリベース演算、キャッシュ構成の最適化の研究を行った。細粒度の動的なクロックゲーティングとパワーゲーティングについては、回路内部の信号を用いて動的にクロックや電源の ON/OFF を制御することで、ランタイムに電力を制御する手法の検討を行った。マルチステージクロックゲーティングや、疑似パワーゲーティング法で電力を10%~20%程度削減できることが分かった。FPGA上での回路の動的書き換えについては、SEU エラーにより FPGA の構成ビットが変化し、回路の機能が正しくなくなる現象に対し、3重系よりも安全な4重系の構造を提案するとともに、エラー発生時にエラーを同定してエラーモジュールの動的再書込みによる機能の復帰を行う手法の提案を行った。実際に提案手法を Xilinx FPGA の動的部分書換え機能を用いて実現し、安全性と面積オーバーヘッドの評価を行った。メモリベース演算については、メモリ部の書換え可能性がランタイムの最適化に有効であるという判断から、基礎的な算術演算および CORDIC 法による三角関数や乗算・除算の実現手法の研究を行った。これは、演算器の入力をアドレスとして、計算結果をメモリに入れることで算術演算を実現するものである。なお、アドレスに対してメモリのサイズが指数的であるので、入力をいくつかに分割してメモリで実現し、メモリ出力を演算器に入れるなどの手法が必要であった。また、ハードウェア内部の演算器の結果をキャッシュ的にメモリに入れることで再計算を行わずにメモリアクセスで済ませる手法の検討を行った。これらのメモリを用いた演算手法は、論理ゲートの出力の変化による動的電力を削減する効果があり、実行時の電力最適化に有効であることがわかった。さらに、次世代不揮発メモリを用いたキャッシュメモリの電力の最適化についても検討を行い、L1 キャッシュの一部とL2 キャッシュを不揮発化することで、リーク電力の大きな削減が得られることがわかった。