表題番号:2012B-191 日付:2013/11/04
研究課題社会基盤診断のための情報・エネルギー伝送制御と診断技術の基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大貝 晴俊
研究成果概要
 高度成長期に非常に多くの大型建造物が建設された。中でも橋梁はその4割が高度成長期に建設されており、一斉に更新時期を迎えつつある。老朽化した橋梁の安全性を確保するためには、従前にも増して点検が重要であり、安価で信頼性の高い画期的な点検手法の実用化が望まれていた。
 このようなニーズに応えるために、文部科学省の知的クラスター創成事業の成果および経済産業省の地域コンソーシアムおよび地域イノベーション事業では、無線センサネットワークを用いて橋梁など建造物の日常および緊急時の健全度診断システムを開発した。そこで開発された技術は、無線センサモジュールの開発と、バッテリシステムの開発、日常診断のための走行車両によるデータ収集システムの開発と緊急時診断のための公衆回線によるデータ収集システムおよび健全度診断である。
 この開発事業により、無線センサモジュール、中継器、ネットワークモジュール、データ収集システムの試作を行い、実橋梁での実験によりその性能の確認を行った。また、独立成分分析や伝達関数を用いた橋脚や上部工の亀裂などの基本診断アルゴリズムを明らかにしてきた。
 老朽化する橋梁に対してその健全度診断を遠隔から安価に、簡単に長期にわたって実施するためには、無線センサモジュールの低消費電力化と無線電力伝送の改良を行った。無線センサモジュールの低消費電力化では、低消費電力の2.4GHzのZigBeeモジュールとディジタル加速度センサとR8マイコンを用いた無線電力の試作を行い、ピーク池の消費電力を50mWに抑えた低消費電力化を達成した。
 このモジュールで、3個の無線ンサモジュールによるx、y、zの加速度信号の収集とコーディネータまでの無線伝送およびLabViewによるリアルタイム表示を可能とした。
 また、伝送距離が10m以上と長い電波方式による無線電力伝送装置の開発を行い、電力伝送用周波数としては、ICタグなどで活用され電波法上出力することが許されている950MHz(UHF帯)を使用した。無線センサモジュールのバッテリとしてリチウムイオンバッテリを接続し、レクチナ、昇圧回路、充電回路からなる無線電力伝送システムによる充電のテストを行い、動作可能であることを確認した。さらに無線センサモジュールの同期計測を実現するため、最新の同期アルゴリズムを考案してマイコンに実装してテストし、良好な結果を得た。