表題番号:2012B-189 日付:2013/04/03
研究課題新擬似過渡解析法に基づく大規模集積回路網の大域的求解法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 井上 靖秋
研究成果概要
研究の背景と目的
回路シミュレーションの非収束の問題は古くから認識されている重要かつ困難な問題であり,これまで様々な観点から多数の研究がなされてきたが,未だ実用的解決に至ってない.全世界で広く実用されている業界標準回路シミュレータ(HSPICE など)もしばしば非収束の現象を起こす.本研究はこの非収束問題に対処する実用的なアルゴリズムの研究・開発に関するものである.研究代表者のこれまでの一連の関連研究成果を更に発展させて,世界一の実用技術を研究・開発し,回路シミュレータの重要かつ困難な課題を解決することを狙いとしている.具体的には,実用的(実装容易)な擬似過渡解析法の致命欠点を克服する新たな擬似過渡解析法を数値積分手法の立場から研究・開発し,回路シミュレータSPICE3 に実装してその有効性を検証する.

研究成果
上述目的を達成するために,(1)数値積分手法の観点からの研究と(2)アルゴリズム実装手法の観点からの研究を行った.
(1)数値積分手法の観点から擬似過渡解析法に適した新数値積分手法について研究した.具体的には,従来手法より大きなダンピング効果をもつ新数値積分手法を提案し,これを用いた擬似過渡解析手法を回路シミュレータSPICEに実装し,有効性を検証した.その結果,従来手法より収束性能が格段に向上することを確認した.
(2)アルゴリズム実装手法の観点から,擬似過渡手法を回路シミュレータに実装する際の実装手法と擬似素子の埋め込み位置について研究した.具体的には,複合擬似素子を用いる擬似過渡解析法において,数値積分公式を複合擬似素子に適用し実装する際に,複数の実装法があることを見出して,新たな実装法を提案し,回路シミュレータSPICEに実装し,有効性を検証した.更に,複合擬似素子を元の回路に埋め込む(挿入する)際の埋め込み位置についても検討し,CMOS回路に適したある埋め込み位置があることを発見した.これらの研究の結果,従来手法より収束性能が格段に向上することを確認した.