表題番号:2012B-157 日付:2013/04/12
研究課題アジア・太平洋海域における有用海洋生物資源調査・2
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中尾 洋一
研究成果概要
2012年度は国内(南西諸島:奄美大島、徳之島、中之島、大島新曽根、竹島、伊豆諸島:式根島)で海綿、腔腸、原索動物などの海洋無脊椎動物を中心として139検体の海洋生物サンプルを採集した。採集したサンプルに対して、アルコール抽出エキスから調製した脂溶性および水溶性成分のライブラリーを作成した。同時に共生微生物のゲノム遺伝子採取用にサンプル小片をエタノール中冷凍保存し、遺伝子ライブラリーとした。また、生理活性化合物を作っている共生微生物の単離・同定・培養法確立のため、式根島産の海綿 Discodermia calyxを採集し、実験室内で長期飼育を行い、飼育サンプルから共生微生物を取り出して、メッシュによる分画とセルソーターによる共生微生物の分離を試みた。得られた微生物画分に関して、産業総合科学研究所(木村信忠主任研究員)およびNITE(山副敦司研究職員)との共同研究によって次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析を実施し、主要な共生微生物の同定およびゲノム遺伝子解析を行った。
一方、イタリア・ナポリ大学のグループ(M. V. D’Auria教授およびA. Zampella教授)と新たにTheonella 属の海綿に含まれる、ステロイド誘導体成分の構造-活性相関研究に関する共同研究を開始した。まず天然の主成分であるセオネラステロールを大量に単離して、天然化合物をメチル化・アセチル化・酸化・還元・脱水などの化学的操作によって各種誘導体に導いた。導いた各誘導体をつかって、胆汁鬱滞の治療薬標的として期待されるFXRアゴニスト活性を調べ、さらにドッキングモデル解析を行うことで、構造-活性相関を明らかにした。(論文1)
本共同研究が基盤となり、2013年度の基盤研究(B)海外学術調査は、イタリアのグループとの共同研究の内容「海洋微生物の共生-進化系理解のための日-欧連携フィールドワーク」で研究助成申請を行い、採択された。