表題番号:2012B-151 日付:2013/04/07
研究課題超重力・超弦理論に基づく素粒子模型の現象論
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 安倍 博之
研究成果概要
磁場を持つ6次元トーラス上にコンパクト化された10次元超対称ゲージ理論のゼロモードの一部を素粒子標準理論の粒子群に同定した場合には、物質粒子の世代数が磁束の本数で決まり、更にはこれら物質場の波動関数が磁場の効果で余剰次元空間に局在するため、4次元有効理論における湯川結合定数の階層構造が生じる。このような機構に基づき、本研究では観測されている素粒子の質量固有値や混合値の階層性を再現するような磁場とウィルソンラインの値を同定し、更にそれらの下での素粒子現象論を解析した。超対称性を局所化した場合には余剰次元の幾何学的構造を司る力学的自由度はモジュライと呼ばれる超対称多重項として有効理論に現れるが、ここでは特にモジュライが伝達する超対称性の破れの大きさに対して実験から強い制限がかけられることを示した。これは超弦理論に基づく素粒子模型の構築に重要な指針を与える結果として論文[1]に発表し学術雑誌に掲載されると共に、日本物理学会では研究協力者によりこれらの成果に関する発表が行われた。また、2012年初夏に大型ハドロン衝突型加速器(LHC)においてヒッグス粒子とみられる新粒子が発見されその質量が同定されたが、これが実際にヒッグス粒子である場合には最小超対称標準理論のパラメターに対して厳しい制限が加えられることになる。LHCで未だ超対称粒子が発見されていないという事実からこれらの粒子の質量は電弱スケールよりもかなり大きくなければならないが、このような状況で観測されたヒッグス粒子の質量を再現するためには多くの場合パラメターの微調整が必要になる。本研究ではゲージ粒子の超対称パートナーの質量比に対するこれらの制限を精密に解析し、パラメターの微調整なしにヒッグス粒子の質量値が再現できるパラメター領域を同定した。これは背後にあるより基本的な理論を考える上で大変重要な指針となる。これらの成果は論文[2]として発表し学術雑誌に掲載された。