表題番号:2012B-141 日付:2013/04/11
研究課題ポリケチド鎖の迅速自在合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要
 遠隔不斉誘導法における新たな立体選択的反応を見出した。申請者がこれまで開発してきた遠隔不斉誘導反応(キラルなシリルジエノールエーテルとアルデヒドのビニロガス向山アルドール反応)はアンチ選択的であったが、ルイス酸を過剰量用いることによってシン体が選択的に生成することを見出した。この現象の一般性を検証し、報文とした(Organic Letters, 14 (20), 5298-5301 (2012))。また、キラルなシリルジエノールエーテルとアセタールを反応させることにより、1当量のルイス酸存在下においてシン選択的に反応が進行することを見出した。この反応についても一般性を検証し、報文とした(Organic Letters, 15 (3), 678-681 (2013))。本反応で原料にアルデヒドを用いてこれをアセタール化した後、その反応系中にシリルジエノールエーテルを加えることによって、直接シン体を選択的に得ることができる。これらの反応開発により、遠隔不斉誘導反応によってシン体とアンチ体のどちらも作り分けられるようになった。  
 さらに、アンチ選択的遠隔不斉誘導反応の生成物から短工程でポリケチド鎖を立体選択的に合成する方法を見出した。すなわち、シリルジエノールエーテルとチグリックアルデヒドを反応させて、選択的にアンチ付加体とした後、アリルアルコール部の二重結合とalpha,beta-不飽和イミドの二重結合をそれぞれ選択的に還元することにより、2,4,6-トリメチルオクタン酸誘導体のすべての立体化学を作り分けることに成功した。すなわち、アルコールをフリーのままSchrock-Osborn触媒を用いて水素添加することにより4,6-シン体が選択的に得られ、水酸基をTBS基で保護した後に白金触媒を用いて水素添加することによりこれにより4,6-シン体が選択的に得られた。一方、不飽和イミドの二重結合をBirch還元すると2,4-シン体が選択的に得られ、パラジウム触媒によって水素添加を行うと2,4-アンチ体が実用的な収率で得られた。これらを組み合わせることにより、極めて迅速な還元型ポリケチド鎖の構築法を開発した。