表題番号:2012B-140 日付:2013/03/08
研究課題反応晶析工学による金属ナノ粒子の形状制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 平沢 泉
研究成果概要
 本申請の課題では、金属イオン(金および白金)を対象に、還元剤の存在下に還元晶析を行い、希望の粒径および粒径分布を有する金属ナノ粒子を積み上げるための最適な原料供給制御手法を明らかにする。回分反応晶析法により、還元剤の存在下に、原料供給条件(原料注入速度、注入量、注入時間を工夫することにより、金や白金の微粒子粒径制御(50-400nm)に成功した。微小金粒子の作成はシングルジェット法で行い,溶媒にはアスコルビン酸溶液を用いる条件を検討した.その結果,0.3 μm以下の平均粒径を持つ金粒子を段階的に作成することに成功した.
 次に,作出した平均粒径約0.08, 0.1, 0.2および0.3 μm金粒子を用いて葉緑体形質転換への利用が可能であるか検討するため,モデル植物であるタバコを材料として遺伝子導入を行った.その際,粒径0.6mとして販売されている金粒子(BioRad社)をコントロールとして用いた.葉緑体形質転換ベクターには,選抜マーカー遺伝子であるaadAおよびGFPを発現するpNtag (Okuzaki and Tabei, in press) を用い,各粒径の金粒子に塗布してそれぞれ4プレートに導入した.スペクチノマイシン選抜を行い,1シャーレあたりに得られた葉緑体形質転換体の作出効率を比較した.その結果,粒径0.3 μm以下の全ての粒径を用いた場合において,葉緑体形質転換効率が粒径0.6μmの結果を上回った.最も効率が高かったのは粒径0.3 μmを用いた場合で,1シャーレあたり約9個体の葉緑体形質転換体が得られ,0.6mと比べて形質転換効率が約2倍となった.以上の結果より,本研究で作出した微小金粒子を利用することで,プロプラスチドへの遺伝子導入効率の向上や,まだ葉緑体形質転換技術が確立されていない植物種における葉緑体形質転換系の開発が期待される.植物形質転換は、(独)農業生物資源研 田部井、奥崎氏との共同研究により推進した。
この成果は、国際誌Plant Biotechnology に採択された。