表題番号:2012B-126 日付:2013/04/12
研究課題構造物のリダンダンシーを向上させる補修・補強構造の提案とその実証的検証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 依田 照彦
研究成果概要
鉄道構造物の標準的な構造としてRCラーメン高架橋が建設されるようになり数十年が経過しており、耐久性や耐震性の観点から大規模な改修が必要となる場合が多く見られる。また、近年は駅施設の機能や利便性向上の観点から、既設高架下空間の有効活用が求められる場合もある。これらのことから、構造物の性能向上と空間創造を両立させた高架橋のリニューアル技術の開発が望まれている。
 期待されるリニューアルの一つとして、老朽化したRCラーメン高架橋の補修に、軽量・高靱性の複合構造物を活用することが考えられる。具体的には、CFT(コンクリートフィルドチューブ)の新設・既設RC柱鋼板巻き・増し桁・増し杭などによる、空間創造・耐震性向上・劣化部材の補修である。これらを実現するために部材の構造詳細や設計手法の確立が期待されている。
 特定課題Bの研究では、実証実験による接合部の耐荷力の検証と、実験を再現した構造解析を通して、リニューアル構造の検討を行い、構造物のリダンダンシーを向上させるために必要な技術を開発することを目的とした。
 特に今年度は、異種部材接合部の載荷実験に対する再現解析を3次元FEM解析を用いて実施し、解析結果と実験結果を比較することにより、変形性能と破壊メカニズムを解明することに重点を置いた。
 早稲田大学の大型二軸構造物評価装置を用いて行った梁・柱構造の鋼板補強の実験によって、塑性域が有効に生かせる鋼板補強の妥当性が確認でき、リダンダンシーに富む橋脚の耐震補強方法の提案とその設計法の確立への第一歩が踏み出せた。
具体的には、鋼製補強部材とPC鋼棒において提案した接続方式を適用することにより、脆性的なPC鋼棒の破壊を防ぎ、柱-梁接合部のリダンダンシーを向上させることの可能性が確認できたので、今後は、これまでの試験結果等により各部材の変形性能を把握し、提案している構造形式全体の設計法および施工方法の確立に向けて検討を続ける予定である。
今後の課題としては、①実験前から目視できないひび割れが存在した可能性があるため、今後、実験方法について検討する必要がある、②鋼板とコンクリートの付着の程度が考慮できる有限要素モデルを検討する必要がある、③今後の実橋モデルへの解析データの応用について考える必要がある。
最後に、研究の仕上げとして、今年度の成果を論文と講演を通じて公表する予定である。