表題番号:2012B-116 日付:2013/03/19
研究課題センシング技術を用いた在館者への実効的避難誘導手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 渡辺 仁史
研究成果概要
人間をセンシングする技術として、映像からの人物検出、赤外線などを含むセンサ、またネットワークにつながったスマートフォンのセンサ類の利用などがある。本年度は、人間をセンシングする数種類の技術の可能性を検討し、スマートフォンを用いた人間の行動の位置座標を取得し、それを可視化するシステムを構築した。

○成果概要
外部空間における人間の歩行行動を記録するには、たとえば駅などの群集の映像を撮影しそれを平面座標へ変換する方法や、商業施設などでは対象者の経路を目視で図面に記録していく方法などがある。昨今ではセンサ技術の進歩により、外部空間ではGPSにより歩行行動を追尾することが可能となり、内部空間では赤外線で人間の入退出を感知する技術や、人間もしくは空間にタグを設置しリーダでタグを読み込むことでその移動をトレースする技術なども登場してきた。
こうした中、空間ではなく人間にセンサを持たせることで、人間自身がセンサノードとなり動的にセンシングを行うHuman Probeの概念が登場した。移動体である人間自身がセンサとなり、自分自身、また自分を取り巻く環境をリアルタイムにそして時系列でセンシングすることを、GPSや加速度などのセンサが組み込まれた携帯情報端末の一つであるスマートフォンの普及が可能にしている。
このようにして蓄積された大量のデータはいわば空間や人間の時間変化そのものを表しているため、これを解析することでさまざまなサービスが生まれる可能性がある。歩行データは都市における消費者の購買行動に関するマーケティングにすでに使われているが、リアルタイムに歩行情報を送信する歩行者自身に対して、現在の自分自身の歩行状況を通知したり、同じ空間にいる他の人々の情報を共有したりするなどのさまざまなサービスが想像できる。
そこで本研究では、歩行者が日常で携帯しているスマートフォンから送信される位置および加速度の情報を受け取り蓄積するシステムを構築し、時系列で蓄積される歩行情報の可視化が、都市や歩行を分析するためのツールとして有効であることを検討した。その結果、可視化により歩行に対する意欲が上がったという被験者が多かった。
具体的なシステムは、今回は、Android、iPhoneのどちらからでもアクセス可能なように、HTML5を用いて位置情報や加速度など端末の情報を取得できるようにシステムを構築した。ネイティブアプリはHTML5に比べて実行速度は有利であるが、開発には相当の労力がかかり、それぞれのOSごとに作成しなければならない。さらに、それをユーザーが使用するためには、ダウンロードしなければならないという煩わしさがある。そこで、将来的には多くの人に利用してもらうことを想定しているため、実行速度の点では不利ではあるが、両OSからブラウザで手軽にアクセス可能であるHTML5を採用した。