表題番号:2012B-112 日付:2013/04/27
研究課題カンボジアにおける太陽熱冷房システムによるネット・ゼロエネルギー住宅の実現
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 高口 洋人
研究成果概要
カンボジアのような途上国においては、今後のエネルギー消費の増大は、生活水準の向上に伴い避けられない。また同時に、現在先進国で行われているような対策は、所得水準の低さから導入は困難であり、経済発展に応じた逐次的対策の実施が求められる。そこで、カンボジアにおける太陽熱冷房システム導入の検討に先だって、ヒアリング調査により現地の住宅の企画から設計、建材設備の調達、販売までを含む住宅に関する現状を網羅的調査し、これまでの調査結果も踏まえ、居住者の所得、住宅内エネルギー消費量、対策の導入費用の推移を予測に基づく省エネ技術普及予測を行った。最期に、各対策を導入した際の住宅内エネルギー消費削減量、投資に対する利益率を比較し、行政による補助金等に頼らなくとも実現可能な省エネ改修計画を作成した。
 住宅購入時(2016年)には、29.6[GJ/年]である住宅内エネルギー消費量も、2041年には73.8[GJ/年]と約2.5倍に増加することがわかる。特に、2016年からの2021年にかけては高度経済成長期に差し掛かり世帯所得の伸びが非常に大きいと予測されるため、住宅内エネルギー消費量の伸びもそれに比例して大きくなる。
 改修計画では世帯所得の6[%]を改修予算に充てるものとし、次の3点を考慮して対策導入の順位付けを行う。①:1回の導入でより多くの年間住宅内エネルギー消費量を増加抑制できるもの、②:導入後の光熱費増加抑制効果によって導入費用を回収できるもの、③:①②のペースがより速いもの。結果は、すだれを毎年導入し、加えて2016年に屋根断熱、LED照明、2021年に太陽熱温水器、2026年に内断熱、2031年に高効率冷房、LED照明、2036年に太陽熱温水器、2041年に太陽光パネルを導入するものであった。2016年時の増加抑制量は3.2[GJ/年](12.5%)であるが、2041年時点では56.9[GJ/年](77.1%)と年代が進むにつれて、その量、割合共に増加している。しかし、2045年時点では投資回収可能期間が残り5年となって、多くの対策で導入費用の回収が見込めなくなるため、すだれのような簡易的な対策しか導入できずに、増加抑制量は減少に転じることとなる。
本計画は行政による助成等に期待しない計画となるが、それでも最終的には、35年間で1.156[TJ]の住宅内エネルギー消費量の増加抑制効果が見込める。