表題番号:2012B-108 日付:2014/06/12
研究課題石炭灰を主原料とする新規高機能性ジオポリマー細孔質硬化体の創成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山崎 淳司
研究成果概要
 石炭灰のうち,フライアッシュから作製されるジオポリマー硬化体(フライアッシュ・ジオポリマー)をポルトランドセメントに代わる材料として利用することで、二酸化炭素の削減および石炭灰の有効利用をすることができると考えられる。フライアッシュ・ジオポリマーは作製の際に石灰石を使用せず、さらに高温での焼成も必要ないため、基本的に二酸化炭素の排出はほとんどない。さらに、化学的耐性に優れ中性化による劣化も起こらないという特長をもつ。また、ジオポリマーの骨格構造は、結晶構造こそ持たないがゼオライトと類似しており、イオン交換能を持つことが分かっている。ジオポリマーネットワークにNa+が担持したジオポリマー(Na+型ジオポリマー)を酸で処理することによりNa+がH+で置換され、H+を担持したジオポリマー(H+型ジオポリマー)ができる。このような特性を利用することで、ジオポリマーにはポルトランドセメントの代替材料としてだけでなく、イオン交換材などの機能性材料としての利用が期待できる。例として、H+型ジオポリマーを粉体にしてコンクリートに混合することによって、細孔溶液中のアルカリ金属イオンを吸着し、アルカリシリカゲルの生成を抑制することで、ポルトランドセメントあるいはジオポリマーセメントにおけるアルカリ骨材反応の劣化現象を防止できると考えられる。以上の背景から、H+型フライアッシュ・ジオポリマー硬化体を調製し、その物性評価ならびにその利用方法を検討した。
 その結果,ジオポリマーの骨格構造の破壊を最小限に抑えて、ほぼすべてのNa+をH+で置換するために最適な硫酸濃度は、Na+型ジオポリマーの調製時に使用するアルカリ溶液のアルカリ/水(mol/mol)比によって異なり、本実験の条件では,0.1以上0.4以下のときは0.3 mol/L、0.5では0.5 mol/Lであることがわかった。また,アルカリ/水(mol/mol)比 = 0.3のNa+型ジオポリマーは、他のアルカリ/水(mol/mol)比の試料より酸処理によるAlの溶脱が起こりやすいことがわかった。一方,H+型ジオポリマーは、処理に用いる酸の濃度が高くなるにつれて、板状粒子間のスリット形細孔が増加し、比表面積が増大することがわかった。酸処理によって破壊されたジオポリマー中の4配位Alには、6配位Alに変化するものと試料外に流出するものが認められた。また,H+型ジオポリマーのアルカリ金属イオン収着量は処理溶液のpHが高いほど多くなるが、H+型の調製に用いた酸の濃度が高いほどその増加率は低下することがわかった。H+型ジオポリマーにみられるシラノール基は、アルカリ性溶液と反応することによってシロキサン基へと縮合し、Q4 (0Al)の形態をとると考えられた。以上の結果から,H+型ジオポリマーをモルタルに用いた硬化体を作成することによって,モルタルのpHを低下させ、アルカリシリカ反応を抑制し,膨張抑制した構造体へ応用できることが示された。