表題番号:2012B-107 日付:2013/04/02
研究課題東日本大震災で生じた塩害耕作地に対する地産地消型浄化資材の開発と適用に関する検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
1.研究背景
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,東日本の太平洋沿岸各地に津波被害をもたらした.指折りの穀倉地帯として知られる仙台平野も,海岸線からおよそ4㎞内陸まで海水に浸かり,地震後は津波がもたらした廃棄物類やヘドロ・砂などの堆積物で水田が覆われた.2011年秋以降,大型重機械を用いて,廃棄物類や津波堆積物の除去も行われている.しかし,この方法では新たな廃棄物が発生することになり,多量の災害廃棄物の処理に腐心している現状に不適であるとともに,本来の耕作原土まで除去する危険性を有している.また,土壌に吸われた塩分を除去する方法として湛水除塩が一般的であるが,仙台平野の排水機場および排水路は地震による損壊が激しく,それに地盤沈下が加わり,この方法は本地域には適用不可能である.本研究では,廃棄物を極力出さないで,しかもエネルギーの消費も少なく,土壌中より塩分のみ取り除くところに焦点をあてている.被災水田に浄化資材を列状に埋め込むのであるが,その資材として東北地方に広く分布する火山灰土壌を考えている.
2.研究の進捗状況
 2011年度から定期的に現地調査・試料採取を行い,被災地の含有塩分の空間的および時系列的変化を把握している.また,塩害浄化を,新たに廃棄物を出さないでしかも経済的に実施するために,火山灰土壌を用いた地産地消型浄化材料の開発実験を進めている.その基礎実験として,2012年5月から9月にかけて,理工キャンパス内で水稲栽培実験を行った.さらに,現在,塩分除去に最適な浄化資材の開発を進めている.
3.本年度の研究成果
1) 被災耕作土の時系列変化
被災耕作地の土壌塩分濃度は減少している場合が一般的であり,塩分は下方へ移動している.
2) 水稲栽培実験による本方法の有効性の検討
 異なる4種類の耕作土を充填したプランター4基を用意し,これらに水稲苗を植えてそれらの生育状況および収穫量を観察した.充填した土は,a)塩類除去した津波耕作原土+宮城県産クロボク土,b)塩類除去した津波被災耕作原土,c)津波被災耕作土,d)園芸用黒土,である.収穫量は,b)が最大で,d)が最小であった.これらの結果は,元来の耕作土を残しながら塩分除去する重要性を示唆している.
3) 浄化資材とする「火山灰土壌+α」の検討
 予察実験として,カラム試験およびバッチ試験を実施した.浄化資材としてゼオライト・アロフェン・鹿沼土・赤玉土・クロボク土を用意し,これらに濃度調整したNaCl溶液を注水した.その結果,Na+やCl-について赤玉土やアロフェンがよい吸着を示した.現在,浄化資材とする土壌やそれに添加する無機化合物をかえて実験中である.