表題番号:2012B-103 日付:2013/05/04
研究課題遷移金属元素を含む新規機能性ハイブリッドソフトマテリアルの評価と設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山本 知之
(連携研究者) 理工学術院 助手 吉岡 剛志
研究成果概要
本研究の目的は,異なる遷移金属元素を含む2種類以上の分子からなる分子性共結晶を対象として,その共結晶が遷移金属間の相互作用によって,新たな磁気的,電気的,光学的物性を示すような新規物質の探索を行うことである.また,それと同時に,計算科学的手法を用いた電子状態と物性との関連を検討し,新規機能性ハイブリッドソフトマテリアルとしての分子性共結晶の設計指針を構築することも目指している.分子性結晶の結晶構造については,これまで分子間の相互作用を量子化学計算ならびに第一原理計算によって見積もることが困難であったが,近年開発が進められている新しい計算手法を分子性結晶に適用し,本研究の研究対象である分子性共結晶の計算科学的構造解析手法の確立も目指し,新規機能性物質の設計を試みることも目指している.
本年度は,上記の目標を達成するためにフェロセンとポルフィリン錯体の共結晶,ならびに異なる磁性元素を含むメタロセン共結晶の合成を溶媒蒸発法を用いて試みた.条件や組み合わせを変えて,数十種類の合成を試みた中で,一部の試料に置いて結晶化した試料が確認できたので,それらに対して単結晶X線回折実験による構造解析を行った.また,一方で磁性元素を含む機能性酸化物(PrCoO3:Ca,Sr)の合成も行い,それらの物質中での磁性元素の電子状態解析をシンクロトロン放射光を用いたX線吸収端微細構造測定ならびに第一原理計算を用いて行った.前者の実験は,SPring-8のBL01B1における磁性元素のK吸収端を,またUVSORのBL4Bにおける磁性元素のL吸収端スペクトルの測定を行い,後者の計算にはVASPおよびWIEN2kコードを用いた.これらの実験と計算とを組み合わせた解析により,ハイブリッドソフトマテリアルにおける,新規機能の発現機構について検討する手がかりを得るところまで到達できており,研究成果の一部を国際会議ならびに国際学術誌へ発表することができた.現時点までで,今後の物質設計手法の確立に向けた一定の成果をあげることができたものと考えている.