表題番号:2012B-095 日付:2013/03/22
研究課題グループ会話環境下における場の活性化要素としての会話ロボットに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小林 哲則
(連携研究者) 理工学術院 助手 松山洋一
(連携研究者) 理工学術院 次席研究員 岩田和彦
研究成果概要
 少人数での会議や談笑に見られる会話参加者間で動的な発話やりとりを特徴とする「グループ会話(多人数会話)」を対象として,これに参与して,場を活性化する機械システムを実現するための枠組みについて検討した。
 具体的には,
1)会話に入れない人に参加を促す際のプロトコル
2)興味を引く発話の自動生成
3)会話システム用顔画像処理技術の高度化
4)会話システム用音声合成技術の高度化
の4つのサブテーマをとりあげた。各テーマの成果は以下の通りである。

 「1)会話に入れない人に参加を促す際のプロトコル」は,発話する機会も,話しかけられる機会も少ない会話参加者を見つけて,その人に話しかけ,会話に入ってもらうためには,どのような仕組みが必要かについて検討したものである。このとき,システムは,対象となる人を探す機能,話しかける適切な内容を決める機能,話しかけても全体の調和を乱さないタイミングを決める機能,などが必要となる。ここでは,①参加者の発話状態,視線などからそれぞれの参与役割を推定し,発話者にも主たる聞き手にもなっていない割合が高い人を話しかけるべき対象者とする,②CRFを用いて話題を適切に追うことで発話するべき内容を定める,③現話題の下での会話に参加して「調和的会話参加者」になってから対象者に話かける,などの仕組みを実装することで,所望の機能を実現した。
 「2)興味を引く発話の自動生成」は,会話参加者からの質問にたいする回答内容を自動的に用意する方法について検討したものである。興味を引く発話を行うために,回答内容には,システムの主体的感想,評価的内容を含めることとした。この目的のため,システムは,レビューサイトをクロールし,関連する話題について評価を述べた部分を抜き出し,口語調に表現を変えた上で,内容のふさわしさを評価ランキングし,上位の文を回答文とする方式を考案した。ここで,ランキングには低頻度形容詞を多用している文を評価尺度とした。これによって,情報の多い意外性のある文を選ぶ仕組みが実現し,効果的な回答文を生成することに成功した。
 「3)会話システム用顔画像処理技術の高度化」は,会話システムに必要となる顔検出を安定に行う技術について検討したものである。AAMを改良することで,顔と顔部品の検出精度を飛躍的に改善することができた。
 「4)会話システム用音声合成技術の高度化」は,会話調の音声合成方式について検討したものである。文脈に応じて,適切な声質・抑揚で発話できる合成器を,心理空間上での文脈のクラスタリング,語末表現のクラスタリング等を精緻に行うことで実現した。