表題番号:2012B-089 日付:2013/04/09
研究課題囲碁の数理モデルとSVM機械学習の応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 堤 正義
研究成果概要
本年度は,主に 囲碁の静的評価関数の一般形をSVM機械学習理論に立脚して確立することを試みるとともに、
コンピュータシュミレーションにより得られた一般形の特性の調査を精力的に行った.

ところで、囲碁に拠らず,現在用いられているほとんどの機会学習法は,数値を用いたパラメータ操作に基づくものである.
そのため、囲碁は図形主体のゲームであるにもかかわらず,旧来の機会学習法では、囲碁においても、直接には図形的性質を扱わず
石の配置形状を数値化するという方法が取られてきた.

我々はこれまでに囲碁局面及びその変化をグラフを用いて表現する方法としてB-W Graph Modelを開発しており、
今回はそれを基礎として 石の配置を数値化せず,グラフ表現のまま評価する従来と異なるまったく新しい方法を提案し、
さまざまな静的評価関数の一般形を生成させ、その結果得られた一般形を戦術写像と名づけた.
戦術写像は,囲碁局面から盤上の交点の集合への写像であり,
同時に交点の持つ特徴も示すものである.これにより,交点や着手の持つ特徴をグラフ的に汎用的に表現する方法が確立され,
評価対象に対し,「どのような特徴を持っているか」を評価することで、まったく新しい学習システムの基礎が出来上がった.

またこの手法を種々の詰め碁や実際の棋譜に適用した結果,様々な局面や着手を表し,かつ
評価することができるのに十分な表現力を持っていろこと、さらには実用可能なレベルの計算量で運用できることを確認した.
本解析手法を用いれば、特徴の違いによる局面や着手の分類方法が可能となると思われる。また、
よく用いられる着手の特徴と頻度は低いが決め手となるような手の特徴の違いなども把握できると考えれる。
今後も様々なデータを収集し,提案した手法の解析範囲を広げていきたい.打ち手の個人的特徴抽出、時代による特徴つけ
など、囲碁局面の解説マシーンも開発可能である。


さらには,得られた結果から有用な着手の提案システムを開発し,戦術写像を実装した強力なコンピュータ碁AIの作成
も行っていく予定である.