表題番号:2012B-088 日付:2013/03/27
研究課題数値相対論における動的なラグランジェ乗数係数を用いた安定な形式の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 米田 元
(連携研究者) 理工学術院 助手 土屋 拓也
研究成果概要
Einstein方程式の数値シミュレーションを行う際には,様々な工夫が必要である.
現在の世界の数値相対論では,状況に応じて,様々な工夫を施しながら得たい精度まで達するように
試行錯誤するという作戦が主なものである.
しかし,なるべく汎用的に,長時間安定的かつ高精度な数値結果を得るためにどのような方法が可能か調査研究と検証を行った.
その結果,他の方法に比べ,比較的汎用的に効果のあるconstraintを使用した補正方法に注目した.
従来の研究では,定数に固定されていた補正係数を,時間とともに変化するように制御するための,様々な作戦を検討し,
実証を行った.
constraintの破れ量に対応して,柔軟に補正の大きさをコントロールする方法が数値的安定性に効果の高いことが分かった.
具体的にはconstraintの破れが小さいときは補正の大きさをゼロとし,破れが歩いていど大きくになるまでは,指数的に補正も大きくするが,ある程度以上に破れが大きいときは別の補正方法に切り替える作戦である.
効果があることは大体わかったが,これを下支えする理論,あるいは系統的にこの作戦を行う処方箋などについては,いまだ未完成であり,これが完成した時点で学会発表,論文投稿したいと考えている.
また,constraintの破れ量に応じた制御ではなく,時間発展スキームとも関連した制御方法も検討して,研究実証を行っているところである.
本来は双曲型微分方程式である時間発展方程式が,状況によってはそうでなくなり,放物型などに変化することがある.
そうなると,Courant条件などが変わってきてしまうので,数値計算の破綻につながるという可能性がある.
それを避けるために,動的に補正係数を変化させたり,時間と空間の刻み幅を変化させたりする方法も検討した.
まだ試行錯誤の段階で,発表できるような成果には至っていないが,検討的に研究調査すれば必ず成果が得られそうだという感触を得るまでにいたっている.