表題番号:2012B-084 日付:2013/03/28
研究課題プラズマアクチュエータによる後流速度変動の位相に対する層流剥離非定常安定性の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 手塚 亜聖
研究成果概要
超小型飛行機(MAV)に相当する低レイノルズ数において、迎角のある厚翼の揚力係数は、ほぼゼロ、もしくは負となり、空力性能が悪化することが知られている。平行流の場合、層流剥離は不安定であり振動を生じるが、低レイノルズ数の厚翼では層流剥離が安定化して流れが振動せず後縁で再付着しないことが、空力性能悪化の原因と考えられている。プラズマアクチュエータを後流速度変動の位相に合わせて駆動することで、層流剥離の振動を促進し空力特性を向上させることが期待される。本研究では予備的実験として、プラズマアクチュエータを定常もしくは一定の周波数で駆動させ、設置位置と駆動周波数により揚力係数がどのように変化するかを調べることとした。
プラズマアクチュエータを剥離点付近もしくは風上側に設置することで揚力係数は向上した。振動流の方が定常流に比べて改善効果が大きくなった。プラズマアクチュエータを剥離点直後とみられる位置に設置した場合、改善効果は風上側の設置よりも小さくなった。後縁周辺の非定常流速計測で得られたピークに近い周波数の振動流では、定常流よりも揚力が向上している。剥離点より風下側で渦が放出されている領域に設置した場合、揚力係数はほとんど変化しなかった。
剥離点より風上側にプラズマアクチュエータを設置し振動流を駆動することで揚力係数が向上した理由として、渦が表面に沿って流れ、剥離が抑制されたと考えられる。一方、層流剥離が不安定化して渦が放出されている、剥離点より風下側に設置して振動流を駆動しても、揚力係数はほとんど変化しないことから、既に振動している流れの中に振動流を生成しても流れ場を変えることは難しいことが明らかとなった。
剥離点直後とみられる位置の設置では揚力改善効果は小さいものの、後縁周辺の非定常流速計測で得られたピークに近い周波数では揚力係数は向上している。今後の展望として、この周波数付近にて位相などの駆動条件を変えることで、更に流れ場を変化させる可能性が考えられる。