表題番号:2012B-082 日付:2013/04/26
研究課題メッキコーティングによる超長寿命複合材料の創出
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 川田 宏之
研究成果概要
繊維強化プラスチック(FRP)の更なる長寿命化を図るために,「FRPの表面に金属薄膜を被覆して強化する」という新しい発想に基づく研究を行った.金属薄膜の目的は,FRP内部への水分拡散を防ぐものであり,水分バリアーとして有効に機能するか検討を行った.
 本年度は2011年度に行っためっき技術および吸水試験の結果の妥当性について調査した.
・めっき技術について
 めっき被膜は2011年度と同様に,耐食性,耐摩耗性に優れるNi-Pとした.基板は平織GFRP積層板(母材樹脂:ビニルエステル樹脂,強化繊維:Eガラスクロス)である.2011年度では,通常のめっき工程ではめっき不良が生じたため,めっき工程に物理的エッチング(#120~#2000)を導入することでめっき不良を改善した.さらに,得られるめっき被膜の膜厚および均一性を考慮し,#1200に決定した.2012年度は,3D形状測定顕微鏡を用いた観察から,めっき膜厚の標準偏差と表面粗さに相間関係があることがわかり,2011年度の結果の妥当性を確認した.
・吸水試験について
 2011年度において,試験片全面を水中に浸漬させる通常の吸水試験方法ではめっき被膜の防水性を評価することは困難であったため,片面のみを浸漬させるように片面吸水試験機を創作し,評価を可能とした.その結果,めっき膜厚の増加に伴い,吸水飽和時の重量増加率および拡散係数の低下が確認された.2012年度では,吸水試験後の試験片表面の観察を行い,前年度の結果を視覚的に考察した.試験片表面の観察から,①めっき時間の増加(めっき膜厚の増加)に伴うめっき粒子の粒径が拡大すること,②めっき被膜は層状の組織を成しており,吸水試験後においてはめっき被膜にき裂が生じ,徐々に剥がれていくことが判明した.めっき膜厚が薄い場合にはき裂がGFRPにまで達してしまい,早い段階で吸水が起きてしまうと推察された.き裂が生じる原因として基板のGFRPとめっき被膜の熱膨張率の差が挙げられる.以上の結果より,2011年度の結果の妥当性が示された.
 以上より,金属皮膜が水分バリアーとして機能し得ることが確認され,より最適なめっき被膜の選定,密着性の向上によって更なる防水効果が期待できる.