表題番号:2012B-075 日付:2013/04/15
研究課題エコシステム論をキーとしたプラットフォーム論のさらなる発展
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 根来 龍之
研究成果概要
本年度は、二つの論文として研究成果をまとめた。

一つは、今後の研究発展の方向性を示すために、プラットフォーム戦略論の系譜と現状を整理したものである(Negoro and Ajro, 2013)。プラットフォームは、エコシステムの核となるものである。
この論文においては、経営学におけるプラットフォーム論研究の系譜を、(1)プラットフォーム技術・部品論、(2)プラットフォーム製品論:基盤型製品・サービス論、(3)プラットフォーム製品論:メディア論の3つの流れとして整理した。
そして、文献レビューを通じて、プラットフォーム技術・部品論に関しては自動車の製品開発研究を出自とした製品開発におけるプラットフォーム戦略が研究の流れの中心であること、基盤型製品・サービス論はプラットフォーム・リーダーシップとそれに関連したエコシステム論の議論が重要な位置づけを占めること、そして、メディア論はプラットフォーム・ビジネスを対象とした研究とTwo-Sided Platform戦略に関する研究が大きな2つの流れであることを示す。加えて、プラットフォーム製品論における基盤型製品・サービス論とメディア論との融合、社会プラットフォーム論への展開、の2つを今後のプラットフォーム論の発展方向の例として提示する。

もう一つは、ネット化、デジタル化を背景とする産業のモジュール化の進展により、顧客から見た産業構造が従来の「バリューチェーン型」から、「レイヤー型」へと変化し始めていると主張する論文である(根来・藤巻, 2013)。この論文においては、「レイヤー型の産業構造は、バリューチェーン型の構造とは異なるものであり、対応すべき戦略課題も異なる」ことを示した。この論文の問題意識は、家電メーカーを始めとする日本企業の国際競争力低下の原因の一つは、日本企業がネット化、デジタル化による産業構造の変化に対応できていないからだという認識に基づくものである。例えば、日本企業が得意としてきたバリューチェーン統合による競争力強化という戦略が産業構造の変化によって、必ずしも通用しなくなってきていると思われる。この結果、レイヤー型産業構造への対応である、「レイヤー戦略」が日本企業に求められていると主張する。
レイヤー戦略論は、エコシステム型の業界の戦略論と位置づけられる。