表題番号:2012B-038 日付:2013/04/01
研究課題女性の生涯にわたるキャリア形成支援システムの開発―大学から育児期を中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 村田 晶子
研究成果概要
本研究は、女性の就労、出産・育児期を見通したキャリア形成をふまえた大学教育のあり方を研究していくことを目的とする。わが国では、女性が出産・育児を経て就業を継続することが難しい。現在でも4割の女性が出産を機に退職し、第1子出産前後では約7割が無職である。その後の復帰は、パートなどの非正規雇用者である。女性の年齢階級別労働力率のグラフは、いまだに「M字カーブ」を描き続けている。こうした女性のライフコースは離職を見込んだ女性の雇用文化をうみ、女性の低収入と経済的不安の要因となっている。少子高齢化による労働力不足の解消と経済的安定のためには女性の経済活動への参画が必要不可欠であり、出産・育児の労働力率を上げることが緊急の課題となっており、それは国の内外の多くから指摘されている(内閣府『男女平等参画社会の形成促進施策概要』2010年度、『IMF年次報告書』)。
このような現状を見据えるとき、本格的な職業キャリアの入り口に立つ女子大学生への教育は、当面の就職活動支援のみならず、確かな労働観、生涯にわたる就業継続のイメージの形成と、特にライフイベントとしての出産・育児期をトータルにとらえる機会の提供が求められている。 
しかし、現状では、多くの女子学生は、大学進学までの進路の見通し以降をもち合わせないまま入学し、多様なロールモデルに出会う機会も少なく、教育学、ジェンダー研究をテーマにする教員のもとではこうした機会に多少恵まれても圧倒的に多くの女子学生は、男性中心の共学大学の中で、アイデンティティを形成することにもがいている。
こうした現状に対して、早稲田大学そのものが教育のあり方や大学のあり方を再検討する時期にあたり、本学の授業を担当する近藤牧子、新井浩子、村田晶子がその授業実践を通して、早稲田大学の女子教育の目的の確認、内容と方法、条件等キャリア形成を意識した大学教育のあり方を検討し、報告書『早稲田大学2012年度特定課題研究助成(特定課題B 2012B-038)「女性の生涯にわたるキャリア形成支援システムの開発―大学から育児期を中心に―」』(村田晶子、新井浩子、近藤牧子、発行村田晶子研究室、2013年3月)をまとめた。