表題番号:2012B-026 日付:2013/04/25
研究課題テーベ岩窟墓第47号(ウセルハト墓)の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 近藤 二郎
研究成果概要
 本特定課題研究の研究代表者である近藤二郎は、2007年12月より、エジプト・アラブ共和国ルクソール市対岸のアル=コーカ地区において、100年以上もの間、アクセスすることができず行方不明状態にあったテーベ岩窟墓第47号の再発見を目的とした発掘調査を開始し、現在まで継続調査をおこなっている。当該岩窟墓は、新王国第18王朝アメンヘテプ3世治世末期の高官ウセルハトの岩窟墓であり、アマルナ直前の岩窟墓の変遷を考える上で極めて重要なものである。
 2012年度は、特定課題研究Bの助成を受け、2012年12月から2013年1月までの期間、発掘調査を実施し、奥室内部および前室各部の観察・測量をおこなった結果、これまで不詳であったテーベ岩窟墓第47号墓(ウセウハト墓)の平面プランを初めて作成することができた。また、1903年の調査時に、壁面の中でアメンヘテプ3世妃のティイ王妃の肖像部分の写真だけが、ハワード・カーターにより報告されていたが、その周囲の前室奧壁の全体の図像が不明なままであった。今回、調査を実施したことで、ウセルハト墓から削り取られ、現在、ベルギーのブリュッセルの王立歴史・美術博物館に所蔵されているティイ王妃肖像の周囲の状況を明らかにすることができた。また、ウセルハト墓の南側部分に残る厚い堆積砂礫の崩落を防ぐために、南側の岩盤直上に日乾レンガ造の壁体を構築した。
 テーベ岩窟墓(ウセルハト墓)の平面プランや岩窟墓細部のデータを収集できたものの、岩窟墓各部には、今なお厚い砂礫の堆積が残っている。また、岩窟墓前庭部の堆積土を約50cmにわたり除去することができた。また、岩窟墓前室天井の大部分は崩落しているため、水平方向の発掘作業は困難であり、上部から垂直方向に掘り下げることとなった。奥室の壁龕は3箇所検出したが、南側の壁龕から墓の被葬者夫婦と思われる等身大の彫像が発見されたが、北側の壁龕部は崩落した砂礫のため確認することはできなかった。