表題番号:2012B-012 日付:2013/05/07
研究課題リスク法学・先端法学の創造・発信・挑戦-比較法力で迫る災害・金融リスクの対策支援
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 上村 達男
研究成果概要
本件テーマを掲げて難関である新学術領域に申請したところ、ヒヤリングまでは行ったものの、遺憾ながら最終的に不採択となった。その後このテーマの重要性は日々高まっており、また不採択時の評価を見ると、研究内容については高い評価が示されていることから、そこで指摘された理系研究者との協働といった問題を払拭することで、再度挑戦する意義があるのではないかとの声も高いことから、再申請を目指すべく検討中である。
 本研究テーマは発展途上国に対しても最先端のリスクに対応しうる法整備支援を行うとの目標を掲げているが、そうした目標の前提としてアジア共通金融・資本市場法制整備という今ひとつの大きな課題が進行中である。これについては、犬飼重仁教授を中心とする研究が日本の国策に採用されており、アジア諸国の関係諸機関との連携も大いに深まっている。2012年7月および2013年1月に開催された「ASEAN+3債券市場創設フォーラム(ABMF)の域内共通プロ向け債券市場創設に向けての検討の現状と展望」が、早稲田大学で開催されたが、そのための犬飼教授の海外出張、海外からの招聘等のために特定課題補助金の一部を使用した。
 さらに、金融リスクの一つの大きな局面である企業買収ルールの比較法研究に専念している渡辺宏之教授の研究成果は、外国で刊行された代表的な書物に掲載される等、諸外国で高い評価を得ているところであるが、本研究補助金をそうした研究のための海外調査資料のテープ起こし代に充当した。その1は、「フランスの弁護士・AMFとの質疑記録(3件)」であり、フランスおよびEUの公開買付けに関するルール改正の動向を調査した記録である。これは、Bertrand Cardi(渡辺訳)「フランスにおける公開買付規制」、渡辺宏之「フランスにおける上場会社の株主構成と公開買付」として、いずれも早稲田法学89巻1号に掲載予定である。その2は、「英国Trust Law Committeeにおけるシンポジウムの記録」であり、これについては、Paul Matthews(渡辺訳)「信託と大陸法的な所有権概念の両立性」が会報信託(2013年夏号)に掲載を予定である。渡辺教授は、比較企業買収法と題する著作が完成間近であり、これによる学位申請を目指している