表題番号:2012B-002 日付:2013/04/10
研究課題中国租界メディアによる宣伝とインテリジェンス戦略の学際的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 鈴木 健夫
研究成果概要
中国租界研究とメディア史研究のネットワークを拡げるべく、研究メンバーは以下のような活動を行い、それぞれに成果をあげた。
 研究代表の鈴木健夫は2013年2月3日~6日にアメリカのMennonite Library and Archives(ノースニュートン) に出張し、1930年代初頭にシベリア、ハルビン経由で上海に移住してきたロシア・ドイツ人難民に関する資料を収集、とりわけメンノ派教徒の動向と彼らに対する報道およびその後のアメリカ移住について事実の解明を進展させ、上海租界の歴史的意義についての考察を深化させた。
分担者の加藤哲郎は、2012年11月17日に名古屋で開かれた愛知大学国際コミュニケーション学部主催国際シンポジウム「国際情報戦とアジア-1930~40年代上海を中心に」において「情報戦としてのゾルゲ事件」を報告し、旧東亜同文書院資料を持つ愛知大学の研究者や上海復旦大学代表等と討論した。2013年1月27日成城大学で開かれた第10回欧亜関史研究会で加藤哲郎は「上海のゾルゲ諜報団」を報告し、独日中関係史研究者と討論した。
 2012年12月1~2日に愛知大学豊橋校舎にて、ワークショップ〈戦時中国・上海メディア関係史料研究に関する新たな可能性〉を、日本上海史研究会・大陸新報研究会・早稲田大学20世紀メディア研究所の共催で開催し、分担者の山本武利が「上海の日系紙」を報告、また分担者の土屋礼子がパネラーとしてディスカッションを行った。このワークショップでは、上海の租界で発行された日本語の新聞雑誌だけでなく、英語、中国語、ロシア語、フランス語など多彩な言語によって発行された新聞雑誌を、経済、文学、芸術など多角的な観点から調査し検討する必要性と、そのための原資料、新聞雑誌リストの存在などの情報が交換され、議論された。
 さらに、分担者の土屋礼子は2012年12月20日に土屋礼子は龍谷大学で、「研究を通して語る東アジアにおけるメディアの過去と現在と未来」を講演した。
 また、土屋は2013年3月16日に北京大学新聞学院で「20世紀前半における日本の新聞社の東アジア関係組織と人脈」を講演した。この中で、上海を一つの拠点とした新聞社のインテリジェンス組織として、毎日新聞社の東亜調査会、朝日新聞社の東亜問題調査会という1930年代に活動した組織と所属記者を取り上げて論じた。