表題番号:2012B-001 日付:2013/05/14
研究課題グローバルマネジャーの育成と海外派遣に伴う課題と政策に関する総合的基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 白木 三秀
研究成果概要
これまでのインドにおける情報収集やプリ・サーベイ、アジアにおける海外派遣者のミッション達成に関する研究蓄積を踏まえ、今後数年間においてはさらに残された課題を明らかにすべく以下のような研究テーマを掲げた。第1に、アジアにおける研究結果が、欧米における日本人海外派遣者にも同様に当てはまるものなのかどうかを、海外派遣者の職位ならびに企業の発展段階(Development stage)が異なる点に留意しながら、実証的に明らかにしたい。第2に、日本の多国籍企業を対象に、世界本社における経営戦略ならびに国際人的資源管理(IHRM)と海外人材の活用可能性との統合性に関する研究を実施する。比較対象の必要に応じて、欧米系多国籍業へのインタビューも日本あるいはアジアにおいて実施したい。このテーマは、申請者の「二国籍型」タイプから「多国籍型」タイプへの組織の移行に関連するものであり、換言すれば、「多国籍内部労働市場」の成立可能性をより実証的に追求するものといっても良い。
まず日本企業の本社の人事担当者、帰任者などを対象に、アジアでの検討結果の欧米諸国への妥当性についてヒアリング調査でインデプスに分析し、そのヒアリングでの知見を踏まえて、操業経験の長い在欧米日系企業とアジアにおける日系企業とを対象に、必要とされるコンピテンシーや関係性における諸課題をヒアリングとアンケート調査法によって明らかにしようとした。実際にはイギリスにおける日系企業(日産自動車、日立製作所、富士通)やロンドン大学の研究者との意見交換が行えたし、いくつかのアンケート調査を検討することもできた。
その結果、日系子会社の人材構成の特徴は、「二国籍企業」であることに変化はないが、徐々にではあるが、現地スタッフがトップ・マネジメントに就任するケースも増大していることがうかがわれた。海外現地法人の外国人社長が本社の役員(執行役員も含む)となっているのは調査対象企業の54%である。さらに海外現地法人の外国人社長が本社採用であるのは19%である(有効回答数108社)。これらの数値を前回調査(2010年)と比べると、海外現地法人の外国人社長が本社の役員であるという比率は10%ポイント、また海外現地法人の外国人社長の採用経路が本社採用であるという比率は、11%ポイント増加している。こうして、本社・現地法人間での人材面での統合と交流が徐々に進んでいることが示されている。
 このため「二国籍企業」は修正型の「二国籍企業」に変化しつつあるといえる。シーメンスなどの「多国籍企業」との大きな違いは、日系企業においては第三国籍人材(TCNs)が依然としてほとんどいないという点に求められる。