表題番号:2012A-940 日付:2013/04/11
研究課題イオン液体を用いた機能分子のミクロ相分離構造への選択集積
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 助教 須賀 健雄
研究成果概要
 汎用ブロック共重合体(例えばPS-b-PEO)が自己組織化して形成する多様なミクロ相分離構造への機能部位の創り込みは、電荷輸送・分離界面を構築する手法として提案できる。これまでにラジカル/イオンを含むミクロドメイン構造の違いにより、例えばスフィア型では繰返し書込み可能なメモリ特性、シリンダー型では1回書込み型のメモリ特性を示し、水平ラメラ型ではメモリ特性が現れない、などメモリ特性の創り分けが可能なことを報告してきた。本研究では、メモリ特性の発現には酸化還元能を有するラジカルと電荷補償イオンとの界面構築が重要な因子と捉え、PS-b-PEOが形成するミクロ相分離構造への機能部位の選択的集積化(配置)を検討した。また、そのときに発現するメモリ特性を相分離構造と相関させて評価した。
 機能部位として安定かつ迅速な電荷授受能を有するTEMPOラジカルを選択し、イオン液体部位(IL)を結合した誘導体1とILを持たない誘導体2を合成、マトリクスとしてスフィア型のポリ(スチレン-b-エチレンオキサイド)(PS-b-PEO)へと添加した。このときの相分離構造の変化をDSC, AFM, TEM, SAXS及び固体NMRにより解析した。PS-b-PEOへの1の添加では、PEOセグメントの結晶融解ピークの消失、PEOドメインサイズの増大などから1のPEOドメインへの選択配置を支持した。対称的に、2の添加では結晶融解ピークは消失せず、PEOドメイン間隔の増大などから2のPSドメインへの選択配置を支持し、以上の結果より機能性分子のドメイン選択的な配置が可能であることを明らかにした。また、1のみ10 wt%添加、および2とILを各々10 wt%添加したPS-b-PEOをそれぞれITO基板へ成膜し、アニーリング後、Alを蒸着することで単層有機メモリ素子を作製した。1を添加した素子では繰り返し書き換え可能なメモリ特性が、2とILをそれぞれ10 wt%添加した素子では一回書込み型(WORM)のメモリ特性が得られ、同一ドメイン中におけるTEMPOとイオン液体の共存の有無が発現するメモリ特性に影響することを明らかにした。一部、独・Max Planck研究所との共同研究として走査プローブ顕微鏡を用いた局所(ドメイン)導電性変化についても観測し、メモリ特性の発現機構への足がかりを得た。