表題番号:2012A-928
日付:2013/04/11
研究課題並列処理可能な計算資源を有効利用するためのジョブ並列化
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | メディアネットワークセンター | 助教 | 金光 永煥 |
- 研究成果概要
- 本研究では,同時複数処理可能な計算機が分散された環境における,計算資源の有効利用を目的としたジョブ並列化手法に取り組んだ.主に,複数のプロセッサが存在する計算機を想定した上で,割り当てるべき処理単位(クラスタ)の選択,及び割り当て先プロセッサを理論的に導出する手法を検討し,最終的に「Cluster Remapping」というアルゴリズムを開発した.これは,一度コア(プロセッサ)に割り当てられた処理単位(クラスタ)を,応答時間のさらなる短縮のために他のプロセッサへ再割り当てを行うものである.このアルゴリズムには,主に2つの処理ステップから構成される.第一ステップでは,再割当てを行う処理単位の選択である.応答時間を支配している(応答時間を決める実行経路上にあるタスクを保持し,さらに応答時間の占める割合の大きい)クラスタを選択する.第二ステップでは,第一ステップで選ばれたクラスタの割り当て先コア(プロセッサ)を選択する.この選択では,主にクラスタの移動によって通信の局所化が行われ,かつそのクラスタの実行時間が抑えられるようなコア(プロセッサ)を選択する.この2ステップの結果を元にして,クラスタの再割当てが行われる.シミュレーションによる実験の結果,自身のこれまで想定していた単一プロセッサ計算機環境よりもプロセッサ当たりの速度向上に対する貢献度が向上することが確認された.
本研究の貢献は,不均一なマルチコアPC環境においてジョブ実行の際に使用するコア数(またはプロセッサ数),各コアに応じた処理単位の大きさ,割り当て先コア(プロセッサ)を自動的に決定させるための一つの理論体系を構築したことである.さらに,計算資源の有効利用という目的の下,非循環有向グラフのタスクグラフというタスクスケジューリング分野において未だ十分に議論されていないジョブモデルを扱っており,この分野における新たな枠組みを提案したことになる.
本研究で得られた結果を元に,今後はより現実に即した処理モデルを想定した上で,計算資源の有効利用を達成させる手法を検討する.