表題番号:2012A-908 日付:2013/04/12
研究課題色彩感情に関するセマンティックギャップ解決に向けた色彩感情オントロジーの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 助手 村松 慶一
研究成果概要
画像の特徴量から類似した画像を検索するという,内容に基づいた画像検索(Content-Based Image Retrieval)において,画像の表現と画像の意味内容が直接的に結びつかないことが問題である.画像の表現というlow-levelな特徴量と,画像の意味内容というhigh-levelな概念との間の隔たりはsemantic gapと呼ばれており,その解決のための一つのアプローチとして,画像を構成するオブジェクトに関する概念を記述したオントロジーを利用されている.本研究では,色彩感情に関する概念をオントロジーとしてまとめると共に,色彩感情に基づく画像検索のsemantic gap解決に向けたオントロジーの適用を検討した.

オントロジーを利用するアプローチでは,low-levelな特徴量および中間レベルの語彙を構成要素としてhigh-levelな概念が記述された体系を参照モデルとして利用する.例えば,画像における「空」というhigh-levelな概念は,上方領域で青色成分の頻度が高いというlow-levelな特徴量を指していると考えられ,さらに概念と特徴量との中間レベルの粒度では「空間的位置が上かつ色が青」と表すことができる.ここでの「空間的位置」「上」「色」「青」という語彙がオントロジーとして記述されるものであり,概念と特徴量を意味的・内容的に仲介する役割を果たしている.類似した色彩感情を与える画像を検索する際のsemantic gapを解決するためには,画像内のオブジェクトに関するオントロジーではなく,それによって生じる色彩感情に関するオントロジーが必要となる.

色彩感情に関する多くの研究成果に共通して,明度はheavy/light,彩度はactive/passive,色相はwarm/coolの反応と対応することが指摘されている.そこで,それらの測定に用いられるSemantic Differential尺度の形容語を取集し,心理的な属性および属性値の概念として定義した.具体的には,明度,彩度,色相という属性概念と明度量,彩度量,色相量という属性値の概念である.これらの概念を定義するにあたり,上位オントロジーであるYAMATO (Yet Another More Advanced Top-level Ontology)を参照した.

本研究の成果として,オントロジーで定義した明度量,彩度量,色相量の概念を用いて形容語と色空間座標の関係を明示することができた.画像検索で利用する場合には,ユーザが意図する色彩感情の概念についてオントロジーから形容語と色空間座標の関係を抽出することで,画像検索に用いる特徴量に対して適切な制約を課すことが可能になると考えられる.また,検索結果を出力する際に個々の画像と関連した形容語を提示することも可能であると考えられる.