表題番号:2012A-884 日付:2013/03/18
研究課題CXCR4アンタゴニストと血管新生の関連検証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 増田 亮
研究成果概要
血管新生は癌の増悪に大きく関与する生体現象である。癌の微小環境は、貧栄養・貧酸素状態であるが、癌細胞はVEGFやFGFといった成長因子を分泌し、血管内皮細胞に作用させることで、血管新生を促す。その結果、癌細胞に栄養分や酸素が供給されることとなり、癌の増殖が促進されるとともに、新生された血管は癌の転移経路となりうる。そのため、血管新生抑制剤は抗癌剤として有望であると考えられる。過去の研究により、血管新生の進行にはケモカインSDF-1とその受容体CXCR4の相互作用も寄与すると報告されている。In vitroの環境において、血管内皮細胞にSDF-1を作用させると血管新生が促進されると報告されている一方で、CXCR4アンタゴニストが血管新生に対して与える作用の詳細は明らかにされていない。そこで、血管新生をin vitroで観測できる系の構築を行うこととした。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をマトリゲル(タイプIVコラーゲン、ラミニン、成長因子等を含む腫瘍由来の細胞外マトリックス)に播種すると、半日程度で細胞が遊走、形態変化を起こし、管腔様構造を形成した。くわえてSDF-1の添加により、この管腔形成は促進されたことから、この系にCXCR4が関与していることがわかる。一方CXCR4阻害剤であるFCA003およびFCA007を添加した場合、管腔形成は阻害された。
またコラーゲン上で密に培養したHUVECに、ピペットチップ先端で傷をつけ細胞剥離(創傷モデル)部分を作成し、この創傷モデル部分に周囲の細胞が遊走・侵入し、復元(創傷治癒)する過程を画像解析により定量化した。その結果、SDF-1の添加はHUVECの遊走を優位に促進した一方で、SDF1共存下でこれらCXCR4阻害剤を作用させると、SDF-1による遊走促進は効果的に阻害され、正常レベルにまで低下した。しかし、CXCR4阻害剤単独ではHUVECの遊走に負の効果は与えなかった。
以上の結果より、HUVECを用いた管腔形成アッセイおよび創傷治癒アッセイはCXCR4アンタゴニストによる血管新生阻害を観測する系として利用可能であることが示された。今後は上記手法を用いて、血管新生を阻害する新規CXCR4アンタゴニストの創出を目指す。