表題番号:2012A-862 日付:2013/04/09
研究課題現代解析学の手法による乱流理論の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小薗 英雄
研究成果概要
1. 回転する障害物の周りの定常Navier-Stokes 方程式の解の存在と一意性
3次元空間において障害物が回転し,かつ回転軸と同じ方向に並進運動する場合に,
その外部領域 $\Omega$ において非圧縮性粘性流体のNavier-Stokes 方程式の定常解の存在と一意性を考察した.
実際,回転の角速度を$\omega$,並進速度を$u_{\infty}$かつ外力$f = \dive F$ が条件
$|\omega| + |u_{\infty}| + \|F\|_{L^{\frac32, \infty}} << 1$ であれば,
$\nabla u \in L^{\frac32, \infty}(\Omega)$ であって,$u\in L^{3,\infty}(\Omega)$ である小さい解 $u$
が一意的に存在することを証明した.
より一般的な一意性定理として,与えられデータ$\omega\in \re^3$, $u_{\infty}\in \re^3$,
$F \in L^{\frac32,\infty}(\Omega)$ が十分小さく,
かつ$F\in L^{\frac32,\infty}(\Omega) \cap L^{q,\infty}(\Omega)$, $3/2 < r < 3$ であれば,
我々の構成した解 $u$ は$\nabla u \in L^{\frac32,\infty}(\Omega) \cap L^{q,\infty}(\Omega)$
なるクラスで一意的であることを証明した.
さらに,これらのデータが小さい限りにおいては,データーに関する解の連続依存性が成立する.

2. 外部領域における定常Navier-Stokes 方程式の弱解の一意性とエネルギー不等式の関係
3次元外部領域$\Omega$においては,Leray により任意の外力$\dive F$, $F\in L^2(\Omega)$ に対して,
$\nabla u\in L^2(\Omega)$ でエネルギー不等式
$
\|\nabla u\|^2_{L^2(\Omega)} \le \dis{-\int_{\Omega}F\cdot\nabla u}dx
$
を満たす弱解 $u$ の存在が示されている.
しかし,そのような弱解については,空間 $L^{3, \infty}(\Omega)$
における小ささを仮定する必要があった.
本研究では,弱解そのものに対する小ささではなく,与えられた外力$F\in L^2(\Omega)\cap L^{\frac32,\infty}(\Omega)$
が空間$L^{\frac32,\infty}(\Omega)$ において十分小さければ,$\nabla u \in L^2(\Omega)$ であってエネルギー不等式を満たす弱解$u$ は一意的に存在することを証明した.
この結果は期待できる定常Navier-Stokes 方程式の弱解の存在と一意性に関しては,最良の結果と言える.