表題番号:2012A-861 日付:2013/04/09
研究課題液体を用いた伸縮可能なMEMS配線
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 専任講師 岩瀬 英治
研究成果概要
 近年フレキシブルデバイスの研究が盛んになっているが、曲げのみならず伸縮に耐えられる配線材料はほとんどない。ゴム材料に導電性材料を混ぜた導電性ゴムの電気伝導率は10^1 S/m程度であり、これは固体の配線材料として用いられているAuが4.6×10^7 S/mであることと比べると非常に低い。そのため、高い伝導率と高い伸縮耐性とを兼ね備えた電気配線が求められている。
 そこで、本研究では液体を利用することによる曲げられかつ伸縮可能な電気配線を目的とした。柔軟基板上に金属の配線部とそれを覆うように液体を配置した構造を基本とし、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)の加工技術により製作する。金属としてはAuを、柔軟基板としてはシリコーンゴムの一種であるPDMS(polydimethylsiloxane)を用いた。液体としては、イオン液体を用いることとした。その理由としては、高いイオン伝導率を持つことに加え、水に比べ広い電位窓をもつため電気的に利用しやすいこと、化学的安定性が高いことが挙げられる。しかしながら、未硬化のPDMSをイオン液体と接した状態で硬化させようとすると硬化阻害が起こり、PDMSが硬化しないという問題が発生した。10 hPa程度の低真空でCVD(Chemical Vapor Deposition: 化学的気相堆積)が可能なパリレンは、シリコーンオイルやグリセリンのような低蒸気圧の液体上に直接成膜することができることが知られている。イオン液体もまた低蒸気圧の液体であるため、イオン液体をパリレン膜で封止した後に未硬化のPDMSを流し込み柔軟基板への埋め込みを行った。
 伸縮配線を抑える治具と計測用の電極端子が直動ステージに取り付けられた計測セットアップを用いて歪みに対する伝導率の変化の計測を行った。その結果、歪みが0 %での電気伝導率が8.1×10^6 S/mであったのに対して、歪みが24 %のときにでも2.5×10^6 S/mと10^6オーダの電気伝導率が得られた。