表題番号:2012A-857 日付:2013/05/15
研究課題非営利組織経営におけるステークホルダー理論の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 助手 島岡 未来子
研究成果概要
 申請者は、本助成により、2012年7月10日―2012年7月13日にイタリア・シエナ大学で開催された第10回ISTR( The International Society for Third-Sector Research :国際サード・セクター学会世界大会)において、”Exploring Stakeholder Management in Nonprofit Organizations: The Case of Japanese NPOs”のテーマで研究発表を行った。学会の概要と成果は次のとおりである。

(1) 学会の概要
会議の統一テーマは、「民主化、市場化、そしてサード・セクター」(Democratization, Marketization, and the Third Sector)でああった。ISTR事務局によれば、今回の大会への登録者は、66カ国から665名であり、これまでで最大規模であった。大会には、900本のアブストラクトの投稿があり、90名のレヴュアーにより、そのうち564 本が受理された。
 パネルセッションを含み178のセッションが設けられ、15本のポスター展示、ワークショップが行われた。さらに、今回はISTRの20周年ということで、市民社会とサード・セクター、各種財団の研究への貢献などをテーマに、過去20年を振り返る特別セッションが複数開催された。並行して、博士候補生向けセミナー、新会員歓迎レセプション、地域ネットワーク・ミーティング、イタリアン・ワークショップなど様々な催しが行われ、終日活発な議論と交流が展開された。
 セッションは、会議テーマの区分では「市民社会、市民権、民主主義」にかかるセッションが最も多く(31)、次いで「社会的起業家精神、社会的企業、ソーシャル・エコノミー」(26)、「マネジメントと実践」(17)、「フィランソロピー」(17)などの順であった。個々のセッション/ワークショップの内容は、多岐に渡るため全てを網羅することは不可能だが、例えば市民社会の世界的連合組織であるCIVICUS による38カ国を対象とした市民社会の状況調査結果の報告、ソーシャル・メディアを用いた市民活動の展望、各国の社会的企業の事例や組織分析、サード・セクターとビジネスとのパートナーシップがあった。
 日本人参加者からも、多彩な研究発表があった。テーマは災害復興における市民社会とソーシャル・キャピタルの役割、フィランソロピーに関する日中韓の比較研究、会計情報の開示と寄付行動、在日コリアン高齢者を支援するボランティア・ネットワーク、ソーシャル・ビジネスと非営利組織、社会的起業の段階、フェアトレード運動などである。大会の様子は、ISTR ホームページ
< http://www.istr.org/?page=Siena >に詳しく掲載されている。

(2) 申請者の研究成果
 申請者はアブストラクトを投稿し、受理された。アブストラクトは、学会ホームページ< http://www.istr.org/?SienaAbstracts> に掲載されている。その後、フルペーパーの提出を経て「現代のマネジメントの論点」と題されたセッションにて発表した。発表では、研究の内容や理論フレームワークについて複数の質問があり、研究の精緻化に極めて有用なインプットをいただいた。さらに、各国の非営利組織の状況を直接聞くことにより、サード・セクターの世界的なダイナミズムの一端に触れることができたことは、今後の自身の研究の発展に極めて有用である。さらに、国内を始め各国の研究者と交流し意見交換を行い、ネットワークを構築することができた。
 加えて申請者は、日本NPO学会からの依頼により、大会の模様を会報「日本NPO学会ニューズレター」Vol.14 No.2(2012年9月発行)において報告している。その中で、今回の発表が早稲田大学「2012年特定課題研究助成費」の助成であることを明記している。
申請者は本学会におけるインプットを基に論文を修正し、博士論文の1部として提出した(2013年3月公共経営博士号取得)。