表題番号:2012A-855 日付:2013/04/12
研究課題イスラエルにおけるVCの創出及びそれに伴う企業セクターのミクロ行動の変化の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 准教授 樋原 伸彦
研究成果概要
 2013年2月にイスラエルを訪問しベンチャーキャピタリスト、起業家、政府関係者、研究者などにインタビューを実施。特に、1990年代初頭に政府の資金サポートによるVC育成ファンド・プログラム(Yozumaプログラム)がITCセクターの発展に大きく寄与したことを踏まえ、類似の政府プログラムが、バイオ、製薬などのLife Sciences Sectorのセクターでも今後の発展に寄与できるかどうか、が一番重要なインタビューでの質問となった。Life Sciences向けの政府ファンドも、Yozumaファンドとその構造は似通っているものの、そのバイオ向けの政策イニシアティブはまだ実施されて日が浅い。その政府サポートの対象として認証されたファンド会社3社のうち、まだ1社しか民間LP(民間のファンドへの出資者)から、必要とされる最低水準のファンド額を調達できておらず、これら3社の投資ファンド(政府サポートのついたいわゆる「ハイブリッド・ファンド」)のLife Sciences セクター創出に向けての影響はまだ不透明である。しかしながら、インタビューでは、多くの関係者が、ICTセクターとLife Sciencesセクターの差異をよく認識しており、Life Sciences向けの新たなファイナンス手法の開発に非常に積極的だったことが印象に強く残った。
 インタビューと並行して、イスラエルの企業データの入手も開始することができた。特にITCセクターにおける、グローバル企業とイスラエルのITCベンチャー企業の関係性に焦点をしぼり、Yozumaプログラムを契機としたITCセクターのイスラエルにおける急速な発展が、ミクロ的にどう進んでいったのかについてのフォーマルな研究成果が期待される。また、そのITCセクターでの企業間関係がLife Sciencesセクターでも発生しうるのかという点も、極めて大きな実際的な課題である。それに関連して、大企業がこのようなemerging eco-systemにおいてどのような役割を求められるべきなのかの考察も行っている。特に、大企業の外部への新規投資機能(いわゆる、コーポレート・ベンチャー・キャピタルなど)についても考察中である。