表題番号:2012A-850 日付:2014/02/27
研究課題日本企業のステイクホルダー・エンゲージメントに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 谷本 寛治
研究成果概要
論文概要
・持続的な発展に貢献する企業の役割を考える上で、ステイクホルダーと良い関係を構築していくことは重要なテーマである。近年、企業に求められる役割あるいは責任は変わり、その企業観も変化している。その結果、企業とステイクホルダーとの関係も、これまでとは大きく変わりつつある。
・日本企業においては、2000年代以降、CSRにかかわる様々な制度化が世界でもトップクラスで進んでいるが、内容的には総体としてはかなり進んでいる部分と遅れている部分があると指摘される。CSRに関係する部署の設立やCSR報告書の発行など制度化の面は進んでいるが、サプライチェーンのマネンジメントやステイクホルダーとの対話の実施などの面については、その対応が遅れていると言える。
・日本企業におけるステイクホルダー・エンゲージメントの課題としてはとくに、①経営の課題として外部の声を聞いてフィードバックし経営戦略の核に組み込んでいくこと、②グローバル企業はグローバル化に対応したステイクホルダー・ダイアログを積極的に展開していくこと、が挙げられる。より基本的な課題としては、CSRを中期経営計画、経営戦略の中に組み込み、中長期的なビジョンのもと、経営計画、戦略を立て、アクションプランを示し、それを各ラインに落としていく作業が必要となる。
・さらに今後は、持続可能な発展に企業がどうかかわり、そこにどのような新しいビジネスの可能性を見出していくか、競争優位をもてるようなイノベーションをいかに生み出していくかというresponsible competitivenessという発想が次のステージの課題になってくる。環境や社会の課題に関して、どのように「サステナビリティ」を経営戦略に組み込むかは、ステイクホルダー・エンゲージメントを通して課題を知り、新しい可能性を見つけていくことが必要である。こういった新しい価値の創出は、ステイクホルダーにとってもプラスになる。単なる会社の説明会ではなく、双方向のコミュニケーションをベースとするエンゲージメントを実施し、サステナビリティを企業経営にどのように位置づけるか、それが新しいイノベーションの芽をどのように生んでいくかが日本企業の今後の課題の一つだと言える。