表題番号:2012A-840 日付:2013/04/17
研究課題双曲Coxeter群のgrowth rateの数論的性質
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 小森 洋平
研究成果概要
双曲 n 次元空間 H^n における多面体で、面角が π/p (pは2以上の整数または∞) の値を持つ多面体を Coxeter 多面体という。Coxeter 多面体の各面に関する鏡映変換で生成される群は H^n に等長的に作用する離散群で、双曲 Coxeter 群と呼ばれ、もとの Coxeter 多面体はこの群の基本領域となる。この群を G、各面に関する鏡映変換からなる生成系を S としたとき、G の元 g の S による最短表示をℓ_S(g) とし、a_n をℓ_S(g)=n となるような G の元 g の個数とする。このとき、Coxeter 系 (G,S) の growth function は a_n の母関数として定義され、常にある有理関数 R(z)=P(z)/Q(z) の原点におけるテイラー級数に一致する。この growth function の性質を調べることは、離散群 G の幾何的性質を調べることに直結する。例えばもとの Coxeter 多面体のG-軌道によるタイル張りが、どれくらいのスピードで H^n 全体に広がっているかを測ることができる。この growth function の収束半径の逆数は growth rate と呼ばれ、2次元と3次元の cocompact な双曲 Coxeter 群については代数的整数、特に Salem 数であることが知られており、同様の数論的考察を non-compact な双曲 Coxeter 群で行うことが本研究の主テーマであった。本研究と前後して研究代表者は学振特別研究員 DC2 の梅本悠莉子との共同研究で3次元の non-compact な双曲 Coxeter 単体の場合に、その growth rate が Perron 数という代数的整数になることを示した ([1])。そして本年度の研究により3次元の non-compact な双曲 Coxeter pyramid についても同様の結果を得ることができ、現在論文を準備中である ([2])。またこの結果は今年度7月にスウェーデンのミッタグ・レフラー研究所で開催される国際会議「Growth and Mahler measures in geometry and topology」における招待講演で発表する予定である ([3])。現在3次元の non-compact な双曲 Coxeter prism について調べている最中であり、これが終われば3次元の場合については面の数が4または5の non-compact な双曲 Coxeter 多面体すべてについて結果が得られたことになる。引き続き面の数が6の non-compact な双曲 Coxeter 多面体、例えば双曲 cube について研究を行いたい。