表題番号:2012A-602 日付:2014/04/10
研究課題流体ダイナミクスの階層構造と秩序化機構の解明に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 吉村 浩明
(連携研究者) 理工学術院 名誉教授 山本勝弘
(連携研究者) 理工学術院 准教授 柳尾朋洋
研究成果概要
(1) 流体の幾何学と陰的なオイラー・ポアンカレ方程式
非ホロノミックな拘束を受ける場合を想定して,移流パラメータを含むリー群上のディラック簡約の枠組みへ拡張し,リー・ディラック簡約によって,移流パラメータを含む陰的なオイラー・ポアンカレ定式化できることを示した.また,移流パラメータを含むリー群上のハミルトン・ポントリヤーギン原理に関する対称性簡約を行い,移流パラメータを含む陰的なオイラー・ポアンカレ方程式が得られることも示した.
(2) 複数のラグランジュ・ディラック力学系の接続
分子システムに代表される多体系は,複数のボディが相互作用することによって構成される.相互作用は,ポテンシャルや拘束条件によって与えられる.本研究では,一つの力学系を複数の部分系に分割し,それぞれをラグランジュ・ディラック力学系としてモデル化することで,元々の力学系を再構成する手法をディラック幾何の枠組みで明らかにした.
(3) 流体及び多体系のダイナミクスと宇宙ミッション設計への応用
対流現象などの流体ダイナミクスに現れる階層構造の解明には,系の安定,不安定多様体の構造に注目して,ラグランジュコヒーレント構造(LCS)と呼ばれる幾何学的な構造を数値的に評価した.それを基に,ベナール対流に現れるLCSを計算した.また,宇宙ミッション設計への応用として,宇宙機,月,地球,太陽からなる制限4体系を2つの制限3体系をつなぎ合わせたものとして捉え,地球から(地球,太陽系における)L2周りへのラグランジュ軌道へ投入する軌道の設計を行った.
(4)ソノルミネッセンスの実験
 静止流体(水)を超音波モータで20KHzから50KHzで加振して超音波の定在波を作り,その腹に単一気泡を置き安定化させ,磁場をかけて音圧を調節しソノルミネッセンスを発生させることで,PVDFニードル・ハイドロホンによる音場の計測を行い,気泡の収縮・膨張過程に現れるリバウンド現象について,最大毎秒100万コマまで撮影可能な高速度ビデオカメラで観察した.特に,単一気泡のリバウンド現象について,気泡界面に現れる揺らぎを観察し,確率的なレイリー・プレセット方程式によるモデルの提案を行った.
(5) キャビテーション気泡雲に関する実験
オリフィス型ノズルで100MPaの高圧力のもとで連続的な水噴流により,キャビテーションを発生させ,気泡雲の高速度ビデオカメラで撮影した.キャビテーション気泡雲が最小となる1~5マイクロ秒前にパルス状の強い圧力波が発生し,その発生頻度は10のオーダーで,伝播速度は1000~1100となることがわかった.