表題番号:2012A-504 日付:2014/04/11
研究課題ダイレクトタッチディスプレイにおける力触覚特性を考慮したインタラクションデザイン
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 上杉 繁
研究成果概要
近年,書籍や操作マニュアルなど従来紙媒体であった多量の情報を電子化し,閲覧するといった利用が広まっている.これら電子情報の閲覧にはスクロール操作が行われており,従来の方法として,キーボードやマウスホイールの使用,あるいは対象を弾いて動かすフリック操作が頻繁に利用される.従来の方法では,入力量がある一定の量に決まっており,情報量が急激に変化した際にユーザは一定の入力量を基に何度も調整を行うか,その都度入力を中断して入力量のモードを切り替えて調整しなければならず,微調整が困難であり認知的な負荷が大きいという問題があった.このような問題に加え,さらに近年急速に広まってきたタッチディスプレイで利用される,フリック操作における位置操作のパフォーマンス向上の問題も踏まえることにした.そこで,力触覚モダリティによる調整が可能である,実物体を操作するときの特性を考慮した,新たなスクロール操作手法に関する研究に取り組んだ.
まずは,フリック操作における力触覚の特性を調べるために,対象を押しつける力と,対象を指で弾く方向に与える力の計測は3軸小型力覚センサ,指で弾く対象の動きは非接触での計測が可能なレーザー変位計を組み込んだ実験装置を構築した.そして,一軸のスライダ機構上において,条件ごとに設定された対象を目標位置まで指で弾く実験を行い,移動距離と付与する力の関係について検討した.
さらに,従来のフリック操作では困難な,早く大きく動かしたり,細かく調整したりなどの幅広い操作量の調整方法に関する問題に着目し,新たなスクロール操作として,実際に回転するホイールを接触しながら調整する操作方法について検討した.そこで,ホイールとギヤードモータの回転数の差を検出し,その状況に応じたクラッチのON・OFFによって,ホイールの回転力の調節を行う回転駆動装置を製作した.そして,ホイール回転に応じてデータをスクロール表示するインタフェースシステムを構築した.続いて,従来のホイール操作やフリック操作との比較として,数字を記載した表の中から,特定の数字をスクロール操作によって探索し,選択する実験を行った.その結果,目標の予測ができる場合には,考案の回転駆動インタフェースにおいて,細かな調整を行うことで無駄な動作を減らし,操作しやすく疲れにくい特長があることを示した.一方,目標値を予測できない場合には,ホイールを軽く止めて逆方向にすぐに動かすなどの,より細かな動作ができることの必要性を見出した.
最後に,従来の操作方法も含め,反復動作,連続動作という観点から,反復動作の一部自動化によって連続動作を実現しているという,考案した回転駆動インタフェースの特性について考察し,フリック操作の可能性を拡げるためのスクロール操作方法の指針について提案した.