表題番号:2012A-501 日付:2014/05/01
研究課題民主主義諸国における党内選挙のデータ構築と比較分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 准教授 久保 慶一
研究成果概要
 本研究は、まだ国際的にみてもデータの体系的な整備がほとんど進んでいない党内選挙についてのデータの収集を主たる目的とし、さらに可能であれば収集したデータを用いた比較分析をも行うことを目指すものである。本研究プロジェクトの発足直後、同時期に欧州政治学会(ECPR)の後援を受けた同種の共同研究が立ち上げられたという情報を入手し、当該プロジェクトを主導するGiulia Sandri博士(本成果概要執筆現在はフランス・リールカトリック大学助教授)と連絡を取り合い、データの整備と分析において協力することとした。そのため、Sandri博士が進める西欧諸国のデータ収集・整備は本研究では行わず、Sandri博士のプロジェクトでカバーされていない領域、とくにアジア、中南米、中東欧・バルカン地域に焦点を絞ることにした。とくに日本について体系的なデータを収集・整備することが本研究の国際的なオリジナリティの高さにつながると判断し、RAを雇用し、新聞資料や政党刊行物を丹念に調査することにより、過去に党員が参加する党首選挙を実施したことのある主要4政党(自民党、社会党、新進党、民主党)の党首交代の経緯と、一般党員が参加する党首選挙が導入された1970年代以降2012年までのすべての党首選挙の制度と選挙結果のデータを収集することに成功した。また、上述の地域の新興民主主義諸国の政党に詳しい国内外の専門家にデータの収集・提供を依頼し、研究プロジェクトの実施期間中に、以下の12ヶ国における主要政党の歴代党首の一覧と党首交代の経緯、および党首選挙の結果に関するデータの提供を得た。
<アジア>
台湾
<中東欧・バルカン>
ポーランド
チェコ
スロヴェニア
クロアチア
セルビア
マケドニア
<中南米>
エクアドル
ブラジル
ボリヴィア
ペルー
パラグアイ

 党首選挙データは各政党が政党単位で保管しているため、データの散逸も見られ、またデータの提供を受けるために政党との折衝が必要なことも多い。そのため収集に膨大な労力・時間を要することがプロジェクト発足当初から最大の懸念材料であったが、実際、各国のデータ収集を担当した方々からは収集がきわめて困難、ときには一部不可能であることが報告された。そうした困難を乗り越え、日本を含めて13ヶ国もの国々の主要政党の党首交代・党内選挙結果に関するデータを収集できたことは大きな成果であると考えている。本研究のデータ収集は、各国・地域の専門家の方々の協力なしには決して実現し得なかった。データを収集して下さった方々、またその方々を紹介して下さった方々に、心より謝意を表したい。収集したデータは、準備が整い次第、ウェブサイトを開設して公開することを予定しており、現在、そのための準備を進めている。
 さらに、比較的早くデータの整備が完了した日本と台湾については、党内選挙導入を規定している要因や、党内選挙実施が政党の支持率に対して与える影響などについて、収集したデータをもとに比較分析を行った。その結果は、2013年9月にフランス・ボルドーで開催された欧州政治学会(ECPR)研究大会において、日本のデータ収集を担当したRAの成田洋平氏を筆頭著者とし、成田洋平・中井遼・久保慶一の共著の英語論文として発表した。この論文は、Sandri博士が編集する党内予備選挙に関する国際比較の共著書に含まれる予定で、現在改稿を進めている。また、上の論文で行った分析をさらに発展させ、日本の諸政党における党首選挙実施の効果に関する定量的分析を現在進めており、その成果は2014年7月に横浜で開催される世界社会学会(ISA)、および同月にカナダのモントリオールで開催される世界政治学会(IPSA)の研究大会において発表する予定である。