表題番号:2012A-091 日付:2013/04/08
研究課題外国人介護福祉士向けインターアクション能力測定方法としてのバンドスケールの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 宮崎 里司
研究成果概要
2010年に作成した、『外国人介護福祉士候補者に向けた介護福祉士国家試験日本語教育マニュアル』でも提案した、外国人介護従事者の「日本語による業務遂行能力」を測定するツールであるバンドスケール(Foreign Care-Workers Band Scales: FCWBS)は、外国人介護福祉士候補者を受け入れている施設の人々が、候補者の日本語能力を測定するために特別に開発された測定基準であり、候補者の日常生活場面、介護場面、国家試験対策学習場面といった、候補者の置かれている状況を踏まえた場面設定がなされている。このバンドスケールは次の2つの目的のために作られている。まず、第一の目的は、外国人介護候補者の現在の日本語能力の到達度を把握することであり、第二の目的は、候補者の次の到達目標を明確にすることである。スケールは「業務場面」、「生活場面」、「国家試験対策場面」の3場面がそれぞれ8段階に分かれている。非日本語教育専門家も評価作業に参加し、外国人介護従事者の能力の到達度を把握することで、主体的な日本語教育の設計者になり、育成型移民政策のモデルの構築に寄与する意識づけが期待される。

今回の特定課題の研究は、以前に開発した介護用バンドスケールを、①介護分野における専門日本語への理解を深める、②インターアクション問題全般を把握する、③非日本語教育専門家が使用可能なバンドスケールを開発することといった目的により、外国人介護従事者の「日本語による業務遂行能力」を測定するツールとして、介護の専門家から寄せられたコメントやフィードバックから改良を加えた。こうした測定は、これまでの日本語能力検定試験(日本国際教育支援協会主催)や日本留学試験(日本学生支援機構)、ACTFL OPI(American Council on the Teaching Foreign Languages Oral Proficiency Interview)、さらには、BJTビジネス日本語能力テスト(日本漢字能力検定協会)などといった能力判定試験にはない、独創的な測定であると結論付けることができた。さらに、統一した介護用バンドスケールではなく、施設ごとによるオリジナル版バンドスケールを作成することが効果的であり、介護分野の専門家が使用しやすいように、日本語習得上の諸特徴ではなく、具体的な業務場面を掲載することが重要であることが明らかになった。