表題番号:2012A-086 日付:2013/03/04
研究課題eテクノロジーを応用した身体活動による乳がん予防の知識・行動の普及に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗
(連携研究者) スポーツ科学学術院 助教 石井 香織
研究成果概要
 本研究は、わが国の女性における身体活動・運動実施による乳がん予防効果の認知度を調査し、認知度を高める必要のある対象者を特定するとともに、効果的な普及方策を検討する手がかりを得るために、認知に関連する要因を解明することを目的とした。
 対象者は、20~69歳までの成人女性1,000名を対象とした横断調査を実施した。調査項目は、社会人口統計学的要因(年齢、婚姻状況、子どもの有無、職業分類、教育歴、世帯収入)、閉経の有無、乳がん既往歴・家族歴、乳がんに関する知識、身体活動・運動実施とがんに関する情報取得の有無、身体活動・運動実施状況であった。乳がんのリスク要因に関する「運動不足」に関する質問項目において「原因である」と回答した者を身体活動・運動実施による乳がん予防効果の「認知者」、「原因ではない」と回答した者を「非認知者」と分類した。この認知に関連する要因を検討するために、強制投入法によるロジスティック回帰分析を行った。
 対象者の平均年齢は44歳、既婚者は74%、子どものいる者は63%、大学・大学院卒の者は35%、フルタイム就労者が30%、閉経者は35%、乳がん既往歴・家族歴を有する者は5%であった。現状では、対象者の32%が身体活動・運動実施による乳がん予防効果を認知していた。40歳代(OR=0.57)、子どもを持つ者(OR=0.61)、大学・大学院卒(OR=1.51)、身体活動・運動実施とがんに関する情報を取得している者(OR=2.30)および乳がんに関する知識(症状)の高い者(OR=2.6)が、認知度に有意に関連していた。
 身体活動・運動による乳がん予防効果に対する認知を向上させることは、身体活動・運動実施への動機づけを高め、態度を変容させる乳がん予防の重要な第一歩であると考えられる。今後は、ヘルスコミュニケーションの理論に基づいて、本研究で明らかとなった認知に関連する要因を考慮に入れた具体的な普及戦略を構築していくことが必要である。