表題番号:2012A-084 日付:2013/04/28
研究課題食健康リテラシー(HEL)の観点から見た健康情報非認知集団へのアプローチ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 中村 好男
研究成果概要
食事バランスガイドは国民の食生活を向上させるためのツールとして作成され、施策として普及啓発されてきた。申請者らのこれまでの研究により、食事バランスガイドを認知できる人の食行動は促進されていく一方で、認知できない人の食行動レベルは停滞したままであるという、健康づくり上の格差が生じてしまうことが示唆されている。このような健康づくり上の格差が生じる要因には、ヘルスリテラシーというスキルのレベルが関わっているため、申請者らは食行動に特化したリテラシー(Healthy Eating Literacy:HEL)評価尺度を開発してきた。本申請課題は、食情報による健康づくりを効果的に推進するために、HELと食事バランスガイドの認知および食行動との関連を検討した上で、ヘルスリテラシーの低い国民に対して、どの情報源から食情報を発信することが有効なのかを検討することを目的とした。
 まず、社会調査モニター1252名を対象にWebによる質問紙調査を実施し、HELのレベルと食事バランスガイドの認知および食行動との関連性を検討した。その結果、食事バランスガイドの認知度は、HELが低い集団で有意に低かった(HEL高群:53.0%、HEL:低群42.9%、p<0.001)。また、実践している健康的な食行動はHEL低群が有意に少なかった(HEL高群:7.0±4.0食行動、HEL低群:4.7±3.5食行動、p<0.001)。
 次に、HELのレベルと情報源(政府・自治体・保健機関、家族、テレビ、雑誌、医療従事者・専門家、友人・知人、新聞、インターネット、ラジオ)との関連を検討した結果、食情報を入手するために検索している情報源は、HEL高群・低群ともにインターネット(HEL高群:5.0回/月、HEL低群:2.8回/月)が最も多く、続いてテレビ(HEL高群:3.4回/月、HEL低群:2.2回/月)であった。HELのレベルに影響を与えている情報源は、雑誌(OR=1.11,95%CI=1.02-1.21)とインターネット(OR=1.05,95%CI=1.02-1.08)であった(性別、年齢、学歴で調整)。
 以上の結果から、HELが低い人ほど食情報を認知しづらく食行動も不十分であることが明らかとなった。そのため、食情報による健康づくりを効果的に推進するためには、ヘルスリテラシーを考慮した食情報の発信が必要であり、雑誌やインターネットから食情報を発信することが有効である可能性が示された。