表題番号:2012A-064 日付:2013/04/11
研究課題神経筋接合部により運動機能を制御する三次元再生骨格筋組織の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 武田 直也
研究成果概要
骨格筋組織の発生では、一列に連なった筋芽細胞が融合して多核の筋管となり、筋管は横紋構造を示す収縮能をもった筋線維へと成熟する。さらに筋線維は、コラーゲンに富んだ筋内膜に覆われて同一方向へ配向した筋束を形成する。本研究では、I型コラーゲンを用いて独自にデザインした「弦状」の細胞培養足場を構築すると共に、細胞密度が高く収縮能をもつ大きな三次元の骨格筋組織の構築を進め、その構造と機能を解析した。
エレクトロスピニング法で紡糸中にグルタルアルデヒド(GA)架橋を施しながら、I型コラーゲン・マイクロファイバーを同一方向に配向させつつ、足場材料密度を下げて細胞が入り込む適度な間隔を保って中空に張り、三次元の「弦状」足場を作製した。ファイバーの配向化のため、2 cmの間隔を空けた平行な2枚の銅板をエレクトロスピニングのターゲット板に用いた。架橋により機械的強度の向上(無架橋との比較でヤング率と引張り強度共に、約2.7倍に増大)と耐水溶性が付与された。また、コラーゲン溶液(HFP溶液)の粘度、GAとの混合比(コラーゲン:GA = 1 : 0.2 (w/w))、紡糸時間(30秒)など諸条件の最適化により、平均ファイバー径は2 m、平均ファイバー間隔は6 mに制御された。足場に播種されたマウス筋芽細胞C2C12細胞およびラット初代筋芽細胞は、ファイバー間の空隙に入り込みながらファイバーに沿って配向・融合して筋管を形成し、これら筋管は同一方向へ高密度に集合して全長1 cmの三次元細胞構造体を形成した。三次元筋線維束組織の断面および切片をそれぞれSEMおよびワンギーソン染色法により画像解析したところ、断面のサイズは40 x 120 mで、設計通りにコラーゲンファイバーは組織全体に散在していた。
代表的な骨格筋マーカーであるミオシン重鎖で蛍光免疫染色を行い観察したところ、筋管組織の平均長は290 mであり一部の筋構造体には筋線維に特徴的な横紋がみられた。そこで、C2C12細胞から作製した三次元筋線維束組織に電気刺激を与えたところ、収縮が見られなかった。一方で、初代筋芽細胞から作製した組織では電気刺激を与えなくても自発的な収縮が観察され、運動機能を有する再生骨格筋組織の構築を達成した。今後は電気刺激与えてそのパターンにより運動を制御することを試みる。また、平行して取り組んでいる初代神経細胞から作製する再生神経束組織と共培養し、神経筋接合部の形成を評価すると共に、神経組織からのシグナル入力による骨格筋組織の運動制御にも取り組む予定である。