表題番号:2012A-057 日付:2013/11/11
研究課題新規の発光性白金クラスター錯体の創成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山口 正
研究成果概要
 まず供与型白金-金結合を有する錯体の発光挙動を調べた。白金錯体として[Pt(thpy)2] (Hthpy=thienylpiridine)アクセプターの金錯体として[Au(PPh3)]NO3を用いて溶液を混合して発光測定を行ったところ、発光強度が変わるのみで、スペクトルの形は[Pt(thpy)2]のスペクトルから変化しなかった。しかし、原料として、[Pt(dbbp)(en)] (H2dbbp=di-t-butylbiphenylen)と[Au(PPh3)]NO3を用いたところ、発光スペクトルに変化が現れた。この組み合わせでは、結晶を得ることはできなかったものの、[Pt(dbbp)(en)]と[Au(PPh3)]NO3を1:1で混合したジクロロメタン溶液のESI-MSを測定したところPt(dbbp)(en)Au(PPh3)+のピークがメインピークとして観測されたことから、溶液中ではPtとAuが1:1で結合した錯体が生成していると考えられる。Pt濃度を4.0×10^-5 Mに固定し、Au/Pt比を変化させた溶液の発光スペクトルを測定した。原料の[Pt(dbbp)(en)]は振動構造を伴ったπ→π*遷移由来の発光を示したが、Auを加えるとピークが長波長シフトし、600 nm付近にブロード化したバンドが観測された。これはPt-Au結合が形成されたさいに、LUMOがπ*(dbbp)からPt-Au結合の反結合性軌道(σ*)に変化したことにより、LMCT[π*(dbbp)→σ*(Pt-Au)]由来の発光が観測されたためではないかと考えられる。
 次に供与型白金-インジウム結合を有する錯体の発光挙動を調べた。白金錯体として[Pt(thpy)2]アクセプターとしてIn(ClO4)3を用いて溶液を混合して発光測定を行ったところ、短波長側に大きな発光ピークの増大ががみられた。特に二等量以上加えた場合430 nm付近に強度が30倍以上の発光ピークがみられた。しかし、このピーク位置は比較的短波長側に観測されており、期待したリン光によるものではなく蛍光によるものではないかと考えられた。