表題番号:2012A-056 日付:2013/10/29
研究課題神経成長因子合成促進物質(-)-scabronine A の不斉全合成研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
 本化合物の効率的な炭素骨格構築法として、光学活性な3置換アレンの酸化的脱芳香族化/逆電子要請型分子内Diels–Alder連続反応を試みた。具体的にはまず、光学活性な3置換アレンを以下の手順で調製した。既知のアルデヒドを出発原料とし、エナンチオ選択的な水素移動反応を経由することで光学活性なアルコール誘導体を得た。この化合物の不斉転写を伴った構造変化を行い、光学活性な3置換アレンを合成した。この構造変換では、アルコール誘導体の光学純度を完全に保持し、かつ良好な収率でアレンを得る反応条件を見いだした。このアレンの酸化的脱芳香族化/逆電子要請型分子内Diels–Alder連続反応を試みたところ望みの環化反応成績体を高立体選択的に得ることに成功した。そこから数工程の変換によって、本化合物の基本となる炭素骨格(サイアタン骨格)を合成することに成功した。
 続いて7員環部の高立体選択的な酸素官能基化を試みた。その方法として、α,β-不飽和アルデヒドに体するoxy-Michael付加を起点としたワンポット連続反応を立案した。先に合成した化合物の3置換オレフィン選択的なジヒドロキシル化と、CBS還元を用いることで目的とするα,β-不飽和アルデヒドを調製した。このアルデヒドのワンポット連続反応を試みたところ、oxy-Michael付加に続く架橋アセタール環形成が一挙に進行し、望みの立体化学を有する4環式化合物を高収率にて得ることに成功した。さらに2工程の変換を経てscabronine Aの世界初の不斉全合成を達成した。
 先の検討によってscabronine Aの世界初の不斉全合成を達成した。そこで、その類縁体であるepiscabronine A及びscabronine Gの不斉全合成の検討をおこなった。scabronine Aの合成中間体であるα,β-不飽和アルデヒドの水酸基をベンゾイル基化した化合物を別途調製し、oxy-Michael付加を起点としたワンポット連続反応を試みた。その結果、oxy-Michael付加に続くE1cb脱離、2度目のoxy-Michael付加と架橋アセタール環形成の4連続反応が一挙に進行し、望みの連続不斉中心を持つ4環式化合物を得ることに成功した。得られた化合物の加水分解によってC11位エピマーであるepiscabronine Aの世界初の不斉全合成を達成した。
 続いてscabronine Gの不斉全合成の検討をおこなった。本化合物は、先に調製した炭素骨格(サイアタン骨格)を持つ中間体から保護基の脱保護と2段階の酸化反応を経て合成することに成功した。なおscabronine Gの不斉全合成は、これまでに他の2つの研究グループで報告されているが、今回の合成法はその2つのグループの合成効率を上回る、効率的な方法である。