表題番号:2012A-054 日付:2013/10/10
研究課題線維化疾患治療薬開発を目指したHSP47阻害剤の探索研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
本研究は、コラーゲンの生合成に必須な役割を担っている小胞体局在型分子シャペロンHSP47に対する阻害剤を取得することを目的として実施された。HSP47とコラーゲンとの特異的な相互作用を阻害する物質は、過剰なコラーゲンの合成と組織への沈着が直接の原因である各種臓器・組織の線維化疾患に対する治療薬を開発する上での、リード化合物として利用される可能性を持つ。
本研究では、①オリジナルに開発したin vitro高スループットスクリーニング系をもちいたこれまでの探索から得られた化合物Xの活性本体の同定を試みるとともに、②ランダムな化合物スクリーニングを引き続き実施した。

①化合物Xの同定
 以前の探索により得られたヒット検体Xに含まれる、構造未知の活性化合物について合成、分離、同定を試みた。我々はヒット検体Xの登録構造であるトリペプチド誘導体を再合成し、副生成物や夾雑物も含めHSP47に対する阻害活性を調べたが、オリジナル検体において検出された活性は再現されなかった。また、合成したトリペプチド誘導体を、酸、塩基、光、熱等で処理した検体についてもHSP47阻害活性を検討したが、期待する活性は検出されなかった。現状では、これ以上打つ手はなく、活性本体の構造決定は迷宮入りした。しかしながら、オリジナルなヒット検体X中には明らかなHSP47-コラーゲン結合阻害活性があることから、低分子量HSP47阻害剤は「存在」することが強く示唆された。

②ランダムスクリーニング
引き続き9440検体のランダムスクリーニングを実施した。その結果、一次ヒット候補化合物として51検体が得られた。そのうち、溶解度と活性の強さを考慮して、二次ヒット候補検体として19化合物を選択した。これら化合物のHSP47への特異性については、他のコラーゲン結合タンパク質である色素上皮由来因子(PEDF)およびクロストリジウムコラゲナーゼS3bをもちいて確認した。しかし現状では、これらヒット化合物の構造に類似性がほとんど見られていない。今後さらにスクリーニングを継続していく予定である。