表題番号:2012A-052 日付:2013/04/05
研究課題ホウ素の高感度定量のための発光性Pt(II)およびPt(IV)混合配位子錯体の合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 石原 浩二
研究成果概要
 当研究室では、金属錯体の分光学的特性が配位子の電子的性質により多様に変化することを利用して、金属錯体を検出場とするホウ素の定量試薬の開発および糖類の定量試薬の開発を行っている。これらの試薬の開発は、ホウ酸(B(OH)3)やその一置換体であるボロン酸(RB(OH)2)が、水溶液中で糖類を始めとするジオール類と可逆的に反応し、安定な錯体を生成することに基づいている。
 これまで、配位子として2,2’-bipyridine (bpy)と3,3’-dihydroxy-2,2’-bipyridine (dhbpy)が混合配位したRu(II)錯体の発光を利用することにより、1.3 ppm程度の低濃度ホウ素の定量が可能であることを報告した。本研究では、フェニルピリジン(ppy)とdhbpyを配位子として有する新規白金(IV)錯体を合成し、その錯体によるホウ素の高感度定量の可能性を検討した。t-BuOH/H2O混合溶媒中でK2[PtCl4]にppyを反応させ、白金(II)錯体[PtCl(ppy)(Hppy)] (1)を合成した。CH2Cl2中で錯体(1)にPhICl2を反応させ、[PtCl2(ppy)2] (2)を合成した。アセトニトリル/水混合溶媒中で、錯体(2)にdhbpyを反応させ、NH4PF6を加えることにより[Pt(ppy)2(dhbpy)](PF6)2の粗結晶を得た。紫外線照射によりこの粗結晶は発光することを確認したが、精製が極めて困難であり、未だ純粋な結晶は得られていない。恐らく、使用を制限されている過塩素酸塩を用いれば結晶が得られると思われるため、今後小スケールの精製を試みる。
 一方、白金(II)錯体(1)も紫外線照射により発光するため、現在[PtCl(ppy)(dhbpyH)]、[Pt(ppy)(dhbpy)]+や、2,3-ジヒドロキシピリジン(dhpy)や6,7-ジヒドロキシ-1-メチル-イソキノリン (dhmiq)が配位した[Pt(ppy)(ppyH)(dhpy)]+や[Pt(ppy)(ppyH)(dhmiq)]+の合成を試みている。