表題番号:2012A-049 日付:2013/04/08
研究課題3.11(2011)東日本地震の解析と非定常カオス理論に基づく地震の統計則と確率的予測理論の構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 相澤 洋二
(連携研究者) 理工学術院 助手 津川 暁
研究成果概要
地震はいくつかの統計則に従っていることが知られており、それが基礎になって地震予測に対する有効な方法が研究されている。本研究では、地震現象に対する経験則として、Omori則、Gutenberg-Richter (GR) 則、さらに間隔分布におけるWeibull則に注目して、3.11 (2011) 地震(M9.0)前後の詳しい解析を進めた。本研究の主要な目標を計画に沿って大きく前進させることができた。大地震の発生に関する予測は、今回の解析においても明確には得られなかったが、これまでの普遍則の基礎と過渡法則を明らかにできた点は、次のステップに進む上で大きな成果だったと思う。まずその結果として明らかにできたことを整理すると、
1)余震に対するOmori公式がマグニチュード毎に成立することを確認し、それによってGR則を再現する新しい分布法則のスケール変換を決定できたこと、
2)その余震の挙動が前震(M7.3)直後の運動とやはりスケール変換で相似則をもっていることが確認できたこと、
3)GR則及びWeibull則が、余震及び前震域の両方においても成立することが確認されたこと、
4)これによって、これまで定常法則として我々が理論化してきた普遍法則が、余震及び前震の非定常域でも成立することを確認し、
5)その結果として、マルチフラクタル則が定常域に限らず一般の場合においても成立することがわかり、地震統計則の基礎が上述の普遍法則にあることが確認できたこと、
6)非定常域に対する移動アンサンブルの方法が、非定常現象の理解において有効な方法であることが示せたこと、
である。これらの結果から、地震統計則の出現根拠をエルゴード仮説に求める従来の解釈を変え、新しい統計則の基礎付けが可能となった点は大きな進歩であった。また本研究で用いられた理論手法が、次の南海トラフ域での解析にも適用できる確信を得た。なお、本研究の成果はInternational Journal NPCS (2013)に掲載される。