表題番号:2012A-046 日付:2013/05/05
研究課題チタニアナノ粒子と有機高分子との複合化による高屈折率ハイブリッド材料の作製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 義之
(連携研究者) 理工学術院 助手 斉藤 ひとみ
(連携研究者) Universite Montpellier II 教授 Bruno Boury
(連携研究者) 大阪市立工業研究所 主任研究員 松川 公洋
研究成果概要
 二酸化チタンは高い屈折率を示すため、二酸化チタンナノ粒子は高屈折率有機―無機ハイブリッド材料の作製に応用されている酸化物である。そこで、二酸化チタンナノ粒子を用い、表面修飾による表面への有機基の導入と、得られた有機修飾ナノ粒子のエポキシ樹脂への添加を試みた。二酸化チタンナノ粒子は、一般には水分散液として入手できる。しかしながら、水分散液を用いると、有機基の導入反応が難しいことに加え、表面にある程度有機基が導入された時点で沈殿するため、有機基の導入には水分散液は適さないと考えられる。また、二酸化チタン表面はそれほど反応性が高くないので、有機基の導入には還流操作が必要になる。
 そこで本研究では、反応活性基を二酸化チタン表面に導入し、これを用いて有機基の導入を行うことを試みた。様々な合成法の中で、非水ゾル-ゲル法を利用すると、表面に反応活性なCl 基やO-i-Pr 基を有する二酸化チタンナノ粒子の合成が可能となる。そこで出発物質に四塩化チタンを用い、ジイソプロピルエーテルを酸素ドナーとしてソルボサーマル条件で二酸化チタンナノ粒子の合成を行った。得られた二酸化チタンナノ粒子は粒径10 nm以下の球形粒子であった。またX線回折分析から、生成物は非晶質であることがわかった。
 二酸化チタンナノ粒子のジクロロメタン分散液とn-オクチルホスホン酸の反応を、室温で24時間処理することにより行った。生成物の赤外吸収スペクトルでは、n-オクチル基による吸収帯が現れており、生成物中にn-オクチル基が存在することが示された。生成物の固体31P NMR測定では、21 ppmと27 ppmにシグナルが現れており、2種類の環境が存在することが示唆された。熱重量分析では、2段階の重量減少が観測され、2段目の200℃以上の約22%の重量減少はオクチル基の分解によると思われた。
 n-オクチルホスホン酸で修飾した二酸化チタンナノ粒子をエポキシ樹脂に導入したところ、いずれの組成でも透明な有機―無機ハイブリッドフィルムを得ることができた。633 nmでの屈折率はポリマー単独の値(1.51)から増加し、62.4 mass%の二酸化チタン添加では、1.66となった。