表題番号:2012A-032 日付:2013/04/02
研究課題放射能汚染物質が搬入される最終処分場からの環境汚染を未然に防止する手法の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
1.研究背景
 環境省は,2011年8月29日付で,放射能で汚染された焼却灰についての取り扱いを示し,「8,000Bq/kg以下の焼却灰については管理型処分場へ埋立処分する」ことを可とした.わが国の最終処分場は準好気性埋立を基本としていることから,放射性物質が浸出水とともに場外へ漏えい・拡散していくことに十分な監視が今後必要となる.
 本研究では,この種の環境汚染を防ぐためにつぎのような事項の解明を試みた.①埋立後10年ほど経過した廃棄物処分場埋立層のボーリング掘削コアを用いて,安定型Csをはじめとしたメタル類の賦存状態の把握,②埋立層内浸透水の挙動解明における電気探査有効性の検討,③Cs等に汚染された焼却灰が投棄される処分場埋立層の中間覆土材の選択に関する基礎データの収集,である.

2.研究成果
1)ボーリング掘削コアの分析
 深度方向に一定間隔でボーリング掘削コアを切断し,それぞれに含まれるメタル類の濃度を測定した.その結果,深度に伴う濃度トレンドが類似する元素の組み合わせが明らかとなった.例えば,Cu・Pb・Zn,Sr・Ba,La・Ceの組み合わせである.さらに,Cu,Pb,Zn,Sr,BaとSO3,Clの各濃度の高いゾーンが一致した.また,メタル類が高濃度を示すゾーンにはGypsumが同定されることが多かった.逐次抽出法に基づく埋立層内におけるメタル類の存在形態の検討からは,Cr・Cu・Pb・Znは主として硫化物の形態で存在すると判断された.安定型Csも0~1mg/kgの範囲で分析され,深度に伴う濃度差が存在した.
2)埋立層内浸透水挙動解明における比抵抗モニタリングの有効性検討
 廃棄物埋立層上に探査測線を設け,降雨前後の比抵抗を測定した.算出した比抵抗プロファイルによると,降水は溶融スラグや覆土部分に沿って容易に浸透していくこと,その浸透ゾーンは降雨後には比抵抗が低下することが示唆された.
3)中間覆土材に関する基礎データの収集  
 東日本大震災後,東日本全域の空間線量率が文部科学省より公表された.千葉県北部および北関東山間部が相対的に高い値を示したことから,これらの地域内約20地点で表層土壌を採取し,構成鉱物や化学組成を調べた.これらの因子とCs沈着量との間に未だ明瞭な関係は得られていない.