表題番号:2012A-030 日付:2013/04/02
研究課題代数体の算術的基本群の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 尾崎 学
研究成果概要
本研究の主要研究対象は代数体の算術的基本群,即ち,分岐する素点を制限した下での有理数体の代数拡大体上の最大拡大のGalois群である.算術的基本群は数論における基本的な研究対象であり,本研究では以下で説明するような2つの結果を得ることができた:
(1)代数体の算術的基本群と算術的同値性
2つの有限次代数体に付随するデデキントゼータ函数が一致するとき,その2つの代数体は算術的同値であると言われる.デデキントゼータ函数は,その代数体の数論的性質を深く反映しているが,それによって完全に代数体の同型類を特徴付けできる訳ではない.即ち,互いに算術的同値であるが同型でないような2つの有限次代数体が存在することが知られている.そこで,代数体の如何なる数論的性質がそのデデキントゼータ函数を特徴付けるか,という問題が大いに興味を惹くことになる.本研究ではこの問題に対して,有限次代数体のある種の算術的基本群の族がデデキントゼータ函数を決定し,またその逆も然りであることを示すことに成功した.
(2)無限次代数体の絶対ガロワ群による特徴付けNeukirch-内田の定理は,有限次代数体KとLに対して,KとLの絶対ガロワ群G(K)とG(L)が同型であることは,KとLが体として同型であるための必要十分条件であることを主張している.つまり,「有限次代数体の絶対ガロワ群は,その体の同型類を完全に特徴付ける」という定理である.一方,一般の無限次代数体についてはNeukirch-内田の定理は成立しない.それは,代数体が"大きく"なれば,その絶対ガロワ群は"小さく"なるため,持っている情報が少なくなることに起因している.しかし,本研究ではある種の有限次代数体のZ_p-拡大体という比較的"小さな"無限次代数体の族については,その絶対ガロワ群が同型類を決定することを示すことに成功した.これは無限次代数体に対してNeukirch-内田型定理が成立する最初の実例である.